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【不動産賃貸業向け】法人化で重要なことは?メリット・デメリットと適切なタイミングとは?

【不動産賃貸業向け】法人化で重要なことは?メリット・デメリットと適切なタイミングとは?

個人事業主として不動産賃貸業を営んでいると賃料収入が多くなり、毎年の所得税で苦労している方も多いのではないでしょうか。

個人事業主ではなく新しく法人を設立して事業を法人化したほうが、所得税を軽減できるケースがあります。さらに、自身の法人に不動産を売却することで、相続税の納税資金確保などにつながる点もメリットの一つです。

今回は、不動産賃貸業を法人化することのメリットやデメリット、具体的な事例を交えて法人化に適切なタイミングを解説します。

■法人化とは?

法人化とは、「個人で営んでいた事業を、法人設立にともない事業を法人へ引継ぐこと」です。新しい法人を設立する意味では起業と同じですが、起業する場合は設立資金を出資して新たに事業を始めます。個人事業での資産・負債を引継ぐか引継がないか、という点が、通常の新会社設立(起業)と法人化の大きな違いです。

不動産賃貸業であれば、個人で事業を行うために保有している収益不動産や借入金を、設立した新会社に引継ぎます。その際、新会社名義で金融機関から借入れをして、その資金で個人の資産を買取り、個人は受取った代金で借入金を返済する方法が一般的です。

■法人化で得られる4つのメリット

不動産賃貸業を営んでいる個人事業主が法人化するメリットには、主に次の4つが挙げられます。

◇税負担の軽減

法人化した場合、それまで個人事業主として所得税が課税されていたものが、法人にかかる法人税と報酬にかかる所得税に変わります。

「個人事業での課税所得金額900万円超」となると、一般的に税率差が生まれて、所得税等の負担の軽減ができ、法人化するメリットが生じます。

個人所得税等と法人税等の税率

◇経費化が可能となる

法人化することで、役員報酬や給与の支払い分を経費にできます。経費として計上する金額が増えることで、法人はその分利益が減って法人税が少なくなります。役員や従業員は、所得に応じた所得税を支払いますが、その際は給与所得控除を受けることが可能です。

子どもなどの後継者を法人の社長にした場合は、社長の報酬で所得控除が受けられるだけでなく、生前に資産を移転させることもできます。形だけの社長であれば問題ですが、不動産賃貸業を行うための業務にあたっているのであれば問題はありません。

同じ事業を行っていても、法人化することで経費として認められる幅が広がる点も、税負担の軽減につながるメリットです。例えば、役員退職金を積み立てるための生命保険料など、事業を営むうえで要した費用はすべて経費にできます。

◇相続税納税資金の確保など

相続税は、原則「金銭」で納めることが前提です。個人事業主として不動産賃貸業を営んでいる場合、個人の保有資産の大半が不動産となり、相続税の納税資金が準備できなくなるケースもあります。

しかし、不動産を法人に売却したり、後継者を社長として役員報酬を支払ったりすることで、不動産という固定資産を資金化して流動化させることが可能です。仮に、相続税を納付できず延納した場合、延納した金額に対して利子税がかかります。

不動産賃貸業を続けるために、不動産を売却せずに延納を選択していたとしても、その利子税は経費にできません。法人化して納税資金を確保すれば、余計な負担を減らせます。

◇赤字を10年間繰越せる

事業を営んでいて生じた赤字の損失は繰越し、翌期以降の黒字と相殺できます。ただ、個人事業主の場合は3年しか繰越せないのに対し、法人は10年間繰越すことが可能です。減価償却費や空室の影響などによる赤字を、より長い時間をかけて黒字と相殺できる点は、大きなメリットといえるでしょう。

■法人化によるデメリット

法人化に伴うデメリットは、主に以下の3つです。

◇赤字でも課税されてしまう

法人は、赤字でも税金がかかります。個人事業主で赤字となり一定の要件を満たした場合は、所得税・住民税ともに非課税です。しかし、法人の場合は赤字でも法人住民税均等割を支払わなければなりません。

法人住民税均等割の税額は、資本金と従業員数によって決まりますが、最低でも7万円です。

◇社会保険への加入が義務になる

法人の場合、役員や従業員の社会保険加入が義務です(役員の場合は、例外あり)。しかし、個人事業主で従業員数が5人未満の場合は任意加入のため、社会保険への加入義務はありません。

法人で従業者数が多い場合や、報酬・給与が高い場合は、社会保険料の負担も大きくなる点もデメリットです。当然、赤字の場合でも社会保険料は負担しなければなりません。

◇相続財産が増加する場合がある

個人から法人へ売却する不動産の価格は、相続税評価額よりも売却価額(時価)が高い場合、法人に移転することで、短期的には相続財産が増加することがあります。

よって高齢の方で、相続対策のために建築した築浅の物件を法人へ売却する時は注意しなければなりません。

■法人化するうえでのタイミングとポイント

このようなメリット・デメリットがある法人化ですが、どのような場合に法人化を検討すべきなのでしょうか。法人化するタイミングとそのポイントを解説します。

◇個人の課税所得が900万円超で、今後、所得が増えていく見込みがある場合

個人の所得税等は累進課税のため、課税所得金額が900万円を超えると、その部分の税率は43.69%にもなります。一方、法人税等の税率は、前述のとおり「800万円超の部分で33.59%」です。そのため、所得が900万円を超える部分は、所得税よりも法人税で納税できるほうが、負担が少なくなります。

所得税・住民税の合算速算表(復興特別所得税を含む)
課税所得金額 税率 控除額
- 1,950千円以下 15.105% -
1,950千円超 3,300千円以下 20.210% 99,548円
3,300千円超 6,950千円以下 30.420% 436,478円
6,950千円超 9,000千円以下 33.483% 649,356円
9,000千円超 18,000千円以下 43.693% 1,568,256円
18,000千円超 40,000千円以下 50.840% 2,854,716円
40,000千円超 - 55.945% 4,896,716円

※個人の2013~2037年(25年間)の各年分の所得税額に対して、2.1%の復興特別所得税が課税されます。

法人税等の実効税率
課税所得金額 税率
2023/3以前*1 2023/4以降*2
- 4,000千円以下 21.37% 25.84%
4,000千円超 8,000千円以下 23.17% 27.55%
8,000千円超 - 33.59%

※中小法人(期末資本金の額が1億円以下の法人等)の法人実効税率
*1 2019年10月1日から2023年3月31日までの間に開始する事業年度に適用
*2 2023年4月1日以降に開始する事業年度に適用

今後、新しく物件を取得する予定があったり、保有している収益不動産の減価償却費が少なくなったりする場合は、注意が必要です。課税所得金額が900万円よりもさらに増えていく見込みがある場合は、法人化したほうが税金の負担を軽減できます。

◇相続を開始してから3年10ヵ月以内の場合

相続で取得した不動産などを一定期間内に譲渡した場合、所得税についての「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」という制度があります。この制度では、相続税が課税された相続財産を、「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までに譲渡した場合に適用されるものです。

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から「10ヵ月以内」のため、「相続を開始してから(被相続人が死亡してから)3年10ヵ月以内」の場合です。不動産を譲渡した場合、譲渡所得は「譲渡価格-取得費・譲渡費用」で計算が必要です。

しかし、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」に該当する場合は、一定の計算方法にもとづいて、相続税を取得費に加算ができます。取得費に加算できる分だけ所得金額が減るため、法人に不動産を譲渡したときに発生する所得税を抑えることが可能です。

◇個人資産に占める不動産の割合が80%以上の場合

現金と不動産では、相続税計算時の評価方法が異なります。現金よりも不動産で保有するほうが評価額は下がり、小規模宅地等の特例なども活用すると税額軽減につながります。

不動産で資産を保有すれば、相続税対策ができますが、相続税の納税は原則金銭納付のため、個人資産が不動産ばかりだと納税資金が準備できなくなる可能性があります。一般的に、個人資産に占める不動産の割合が80%以上になってくると、相続税の支払いが難しくなる傾向です。

このとき、法人化して不動産をその法人に譲渡できれば、所有している収益不動産を外部に売却することなく、個人資産の現金比率を高めることができます。不動産賃貸業に関する部分は法人の株式に変わっているため、財産分割もしやすくなる点もメリットです。現金比率が高いことで、遺言書を作成した場合でも遺留分対策がしやすくなります。

■法人化の3つの具体的事例

最後に、実際に不動産賃貸業を営んでいる個人事業主が法人化した3つの事例を紹介します。

◇ケース① 個人の課税所得が900万円超あり、今後所得が増えていくことが見込まれている場合

個人の所得が2,000万円あり、所得税や住民税の負担が約700万円にもなっていた。所得のうち、不動産所得が1,500万円で、減価償却が終わる物件もあるため、今後はさらに所得が増え、その分だけ税金も大きくのしかかってくる状態だった。

そのため、相続対策も兼ねて、後継者が出資した法人を設立。その法人が銀行から1億円を借入れ、同額の収益不動産を売却した。役員報酬を経費計上し、個人の所得税よりも低い税率の法人税で納税することなどによって、年間約200万円の税負担軽減を実現した。

◇ケース② 相続で収益不動産を取得してから3年10ヵ月以内の場合

収益不動産を相続したが、相続税を1,000万円延納している。賃料収入があることで所得税は高く、個人事業主のため、延納に対してかかる利子税は経費として計上することもできない。

そこで、自身が出資して法人を設立。法人名義で借入れを行い、5,000万円で収益不動産を売却した。売却で得たお金で、相続税の延納分を納付し、不動産事業のための借入れも返済した。

◇ケース③ 個人資産に占める不動産の割合が80%以上の場合

総資産が10億円あるが、そのうち8億円が不動産となっている。不動産賃貸業は、長男に継いでもらいたいと考えているが、子どもは4人。財産の多くが事業用不動産のため、相続税の納税資金が不足する可能性があり、財産分割でトラブルが起きるかもしれない。

納税資金を確保し、財産分割をしやすくするため、法人化と収益不動産の見直し・整理を行った。今後も保有し続けるものは新設法人に売却し、そうでないものは外部の不動産業者等に売却して、約5億円の現金を確保。

これで相続税の納税資金と現金での財産分割も問題なくできる。さらに、法人化したことで、年間300万円の税負担の軽減ができた。

■まとめ

不動産賃貸業は、個人事業で規模が大きくなっていくと、所得税の負担が重くなったり、相続税の納税資金が確保できなくなったりします。このデメリットは、不動産賃貸業の法人化で解決が可能です。

しかし、法人化するにあたっては、メリット・デメリットを十分に把握している必要があります。

例えば、個人から法人へ不動産を移転する際には不動産取得税・登記費用等がかかります。取得費よりも高い価格で売却すると個人に譲渡益課税が発生します。

また、法人が個人名義の収益不動産を購入する資金を銀行から借入れるなどの手続きも必要です。金融機関や専門家の助けも借りて、法人化するメリットが大きいかどうかを検討してみることをおすすめします。

埼玉りそな銀行では、専門のコンサルタントが不動産賃貸業の法人化に関する以下のようなご相談を承っています。

・相続対策で賃貸アパートを建築したが、所得が大きくなって税金の負担に困っている
・所有資産の多くが不動産で、相続税の納税資金のために、ポートフォリオを見直したい

このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ埼玉りそな銀行にご相談ください。

執筆 2022/4/1 横山研太郎(よこやま・けんたろう)
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