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事業承継税制とは?メリット・デメリットと注意すべきポイントを解説

事業承継税制とは?メリット・デメリットと注意すべきポイントを解説

事業承継を考えている経営者の方のなかには、「事業承継税制」という言葉を聞いたことがある方がいるかもしれません。事業承継税制とは、後継者に会社を引継ぐ際に発生する贈与税や相続税負担を軽減できる制度です。

しかし、メリットだけでなく落とし穴となるデメリットもあるため、利用する際は細心の注意を払わなければなりません。

そこで、本記事では事業承継税制の概要やメリット・デメリット、4つの適用要件などについて紹介します。あわせて、事業承継税制の落とし穴など利用時の注意点も解説します。

■事業承継税制とは

事業承継は、資産だけを引継ぐ遺産相続とは異なり、自社株や事業用資産など事業に関する資産も引継ぐため、手続きに時間がかかりやすい傾向があります。

また、税額が高くなれば、納税のための資金繰りに負われたり、事業承継が難しくなったりするケースもあります。

そこで一定の要件を満たす非上場株式のオーナー兼経営者から後継者へ代表取締役の交代と自社株式等の承継(贈与・相続・遺贈)を実施した場合には、対象株式等に係る相続税の一部(贈与税の全部)を納税猶予できます。

なお先代経営者からの贈与・相続が2018年1月1日~2027年12月31日の10年間に行われた場合には相続税・贈与税の納税を全額猶予できます(特例事業承継税制)。

また、特例承継計画の作成に際しては、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受ける必要があります。

事業承継税制を上手に活用すれば、納税にかかる資金繰りに追われずに済むため、スムーズな事業承継の実行が可能です。

■事業承継税制を利用することによるメリット・デメリット

◇メリット

事業承継税制を利用するメリットは、対象株式の贈与税や相続税の納税が猶予される点です。

特例事業承継税制では、対象株式数の100%が対象となり、前述したように相続税は課税価格に対応する相続税・贈与税の100%分の納税が猶予されます。

◇デメリット

事業承継税制を利用する上での主なデメリットは、次の2点が挙げられます。

・手続きに時間を取られる

事業承継税制を活用するには、煩雑な申請手続きが必要です。まず、通常の申告期限の2ヵ月前(相続開始後8ヵ月以内、または贈与の翌年1月15日まで)に都道府県知事への認定申請を行います。適用の審査を受けて都道府県知事から認定証を交付された後に、写しを添えて税務署で手続きをします。

また、適用が開始された後も要件を満たしていることを確認するため、都道府県知事および税務署へ継続して書類を提出しなければなりません。

適用開始後の5年間は、毎年、都道府県知事へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を提出します。なお、税務署に対する継続届出書は、5年経過した後、3年に1度の提出が必要です。

猶予を受けている間は、忘れずに手続きをしなければなりません。基本的に、事業は長く続けるもののため、納税猶予を受ける期間も長期に及びます。その間に、提出を忘れてしまうと、猶予されている贈与税・相続税の全額と利子税を納付しなければなりません。なお、都道府県によって提出する書類の種類などに差があることも注意が必要です。

・廃業すると利子税が発生する

事業を継続せず廃業してしまった場合、それまで猶予されていた贈与税または相続税に利子税を加えて支払う必要があります。利子税の税率は、年によって変動する場合がありますが、猶予されていた期間が長いほど、支払う利子税の額も大きくなります。

ただし、条件によっては最終的な納税額が緩和されるケースもあります。例えば、特例事業承継税制を利用しており、経営状況の悪化によって廃業する場合は、納税猶予額の一部が免除されます。

なお、制度適用開始となった後、5年経過してから納税する場合は、5年間の利子税が免除されます。

■事業承継税制では4つの要件を満たす必要がある

事業承継税制の適用を受けるためには、「会社」「経営者」「後継者」「制度適用後」の4つについて、それぞれに設けられた要件を満たすことが必要です。

◇会社の要件

会社の要件は、適用を受ける会社が中小企業に該当することです。なお、中小企業基本法による規定では、次に該当する会社が中小企業です。

・製造業その他:資本金3億円以下または従業員数300人以下
・卸売業:資本金1億円以下または従業員数100人以下
・小売業:資本金5,000万円以下または従業員数50人以下
・サービス業:資本金5,000万円以下または従業員数100人以下

その他にも、次のような要件があります。

・上場企業や資産管理会社(条件による)等に該当しない
・従業員が1名以上在籍している

◇経営者の要件

先代の経営者に対しては、以下の要件を満たしている必要があります。

・会社の代表取締役(ただし、前代社長から社長経験のない奥様が相続した株式は「代表取締役だった」という要件に該当せず使えないこともあります)
・贈与または相続の直前に、先代経営者と同族関係者(親族等)で発⾏済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ、筆頭株主となっている
・贈与後は、代表取締役から退任している

なお、贈与後に相談役や取締役会長など、有給役員として会社に在籍することは可能です。

◇後継者の要件

会社を引継ぐ後継者に対する主な要件は、以下の通りです。贈与および相続の場合に共通する要件や、贈与と相続で異なる要件もあります。

贈与・相続共通 ・贈与または相続を受けることで、先代経営者と同族関係者(親族等)で発⾏済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ筆頭株主になる
贈与の場合 ・贈与を受ける直前に継続して3年以上役員だった
・贈与を受けるタイミングで代表取締役に就任した
相続の場合 ・相続する段階で役員であり、相続開始から5ヵ月以内に代表取締役に就任する

◇制度適用後の要件

事業承継税制が適用された後の5年間は、以下の要件を守る必要があります。

・後継者が代表取締役で、筆頭株主である
・継続者が制度の対象となる株式を保有している
・5年間平均で雇用の8割以上を維持している
・資産保有型会社等、上場会社、風俗営業会社等に該当しない
・年次報告を都道府県知事へ毎年提出すること
・継続届出書を税務署へ毎年提出すること

ただし、3つ目の雇用に関する要件については、特例事業承継税制の場合かつ正当な事由があれば、一定の手続きによって納税猶予が継続されます。

また、5年経過後には以下の要件を満たす必要があります。

・後継者が制度の対象となる株式を保有している
・資産保有型会社等に該当しない
・継続届出書を税務署へ3年毎に提出すること

制度を利用した後継者が、次世代の後継者へ引継ぐ際は、再び事業承継税制の適用を受けます。次世代の後継者に事業承継税制が適用されることになれば、それまで猶予されていた納税が免除されます。

■事業承継税制の落とし穴!注意すべきポイント

事業承継税制のメリット・デメリットについて先に説明しましたが、制度を利用する際には、注意すべき点もいくつかあります。ここでは、注意が必要となるポイントについて説明します。

◇自社株を相続する相続人のみしか恩恵がない

事業承継税制は、自社株を引継ぐ後継者のみ納税猶予を受けられる制度です。それ以外の相続人の相続税が下がるわけではなく、本制度を利用しても株式を相続した方しか恩恵を受けられません。そのため、事前に自社株株価に何らかの対策を講じてから利用する必要があります。

個々の会社に適した株価対策は異なりますので、株価評価と個人の資産全体の評価をした上での、総合的な対策が必要です。

あわせて遺留分対策も適宜行い、会社・後継者・相続人のすべてが円満になれるような相続が望まれます。

◇M&Aなどで株式を譲渡すると贈与税・相続税猶予が打ち切られる

制度適用中にM&Aを行い、自社株式を第三者へと譲渡すると納税猶予が打ち切られてしまいます。それまで猶予されていた贈与税・相続税と利子税を合わせて支払うことが必要です。

制度適用から5年経過した後であれば、売却分の株式のみ猶予がなくなりますが、5年以内の場合は株式の一部の譲渡でも猶予が打ち切られます。

近年は、M&Aなどによる外部売却も多くなっていますが、事業承継税制は親族内承継を前提とした制度と認識することが大切です。

◇取消事由が複数ある

M&A以外にも猶予取消しとなる事由が多々あります。取消事由に該当し、猶予されていた税額と利子税を納めることにならないように注意が必要です。

取消事由は、相続税・贈与税ともに全部で20項目以上ありますが、主な取消事由を以下で紹介します。

・資本金、資本準備金が減少した
・後継者が代表者から退任した
・廃業した
・総収入金額がゼロになった
・組織変更をした
・期限までに年次報告書を提出しなかった

要件から外れた場合は、猶予されていた税額と利子税を支払います。例えば、資本金を1円でも減らしたり、年次報告書を提出し忘れたりすると納税の義務が発生します。

元々の相続または贈与時の株価評価が高ければ、納税額も多額となり、経済的に大きなインパクトを受けかねません。このような事態を避けるためにも、相続および事業承継が発生する前に株価を引下げる対策などをしておくなどが必要です。

■まとめ

事業承継税制は、事業承継によって発生する株式に対する贈与税・相続税の納税が猶予される制度です。

ただし、制度の適用を受けるためには、大きく4つの要件を満たす必要があります。また、事業承継税制は、手続きや要件などが煩雑で、適用後にも一定の要件を満たさなければいけません。もし、履行しないと猶予取消しとなり、猶予されていた税額と利子税を納めることになってしまいます。

事業承継税制の利用は、あくまでも事業承継対策の選択肢の一つであり、今後の承継計画や自社株評価も踏まえ、様々な観点から検証し、利用の有無を検討する必要があります。

埼玉りそな銀行では総合的な事業承継対策を検討し、お客さまのご意向に沿ったコンサルティングを行っております。

専門のコンサルタントが事業承継やM&Aなどのご相談を承っておりますので、事業承継を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。

執筆 2022/4/1 續 恵美子(つづき・えみこ)
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