病気を乗り越えたから、いまがある。

このサイトのテーマは、前向きに自分らしく生きる人を応援すること。今回、ご登場いただくのは、女性の生き方を応援する企業の代表を務めながら、数々の病気を乗り越え、誰よりも、ご自身が前向きに生きることを選択している小巻さんにお話しを伺いました。

「女性の幸せって何だろう？」が原点

女性の経営者というと、キャリアウーマンとしてキャリアを重ねてきたのだろうと思われることもありますが、私の場合は大学を卒業後サンリオに入り、結婚を機に退社。それから出産や子育てで30代後半までは専業主婦をしていました。転機は、子どもの死別や離婚を経験して、人生について真剣に考えさせられたことでした。 再就職先として見つけた化粧品販売の仕事を通じ、経済的なことや人間関係を含め、たくさんの女性の悩みを聞きました。それは、当時の自分自身の悩みとも共通していて、「女性の幸せって、どういうことなんだろう？」とすごく考えさせられました。その後、古巣のサンリオの方から化粧品の部門の仕事をやってみないかという話があり、古巣に復帰することになりました。

病気を乗り越えて、新たなプロジェクトを立ち上げる。

しばらく化粧品部門での仕事を続けながら、興味のままに心理学やコーチングを学び始めた結果、自分が本当にやりたいことは「女性の内面からのサポート」だということが、明確になったんです。それで、化粧品の仕事を一区切りつけて、女性の支援ということに舵を切りました。 将来のビジョンが見えてきて仕事も充実してきた矢先に乳がんがみつかりました。不思議とあまり落ち込むことはなく、ためらいなく片方の乳房の全摘出により「生きること」を選択。 あと３年生きるとしたら？、5年あったら？と、生きていることがよかったと思える経験をしていこうと思いました。 今から考えると人におすすめはしませんが（笑）、手術から１週間後には仕事に復帰。術後は、それまで以上に、自分のビジョンを実現するために無我夢中で動きました。サンリオのグループ会社として、女性支援のための会社Nalを立ち上げ、女性に限らずもっと幅広い世代のメンタルサポートをしていきたいとNPOハロードリーム実行委員会を立ち上げました。そして、若い世代の女性に検診の必要性を伝えていくために、その世代に急増している子宮頸がんの予防啓発プロジェクト「ハロースマイル」を東京ＦＭさんと立上げました。

子宮の全摘出を経験。これも神様がくれた経験。

じつは、ハロースマイルの立上げ時期に、子宮の全摘手術を受けました。今度はガンではなく、重い子宮内膜症と子宮筋腫で。乳がんを罹患していたので、私の場合ホルモン治療よりも全摘出を選択しました。この体験は、神様から「子宮を失うことが、女性にとってどういうインパクトがあることなのか、知っておきなさい。」と言われているのかなと思いましたね。たしかに非常に辛い体験でしたが、私の場合、根っからポジティブ思考というか切り替えが早いんでしょうね。だから、これはやっぱりいい経験をさせてもらったと思っています。若い女性たちが、同じような経験をしなくてもすむように、子宮頸がんの予防啓発活動にさらに力を入れるきっかけになりました。

「とりあえず」の答えと向き合う

50代を迎えて大学院に進学。この2年間は、人生でいちばん猛勉強しましたよ。研究テーマは対話的自己論。シンプルに言うと、「自分とどう向き合うか、自分をどうとらえるか」みたいな話です。私はアドバイスを求められても、こうすべきだと言うことはありません。その代わり、「とりあえずの答えを大事にしてみたら？」とお伝えするようにしています。例えば人にはいろいろな役割もあれば、優しいとき、優しくなれないときなど色々な面があるから、深く考えれば考えるほど迷ってしまう。それは、本当の自分は？　とか、揺るがない完璧な最終結論を求めてしまうからなんですね。そんなときは漠然と混沌としているより、自分を整理してみて、「とりあえず今」の答えを見つけて、その方向でチャレンジしてみる。違うと思ったら、こんどは別の道を行けばいい。どんな遠回りも、無駄な経験なんてひとつもありません。病気だってそうです。自分自身も、周りの環境も、どんどん変わる。人生は変化の連続です。2013年には国連人口基金でスピーチする機会も得ることができました。いろいろな転機が誰にでもあると思いますが、すべては次へのステップに他ならないですし、行動するたびに増えていく仲間の輪が広がることで世界は変えられる、そう信じています。