介護の本質は、尊厳のある生活を支えること

ひとりひとりのニーズに合わせた訪問看護サービスを展開し、日本のヘルスケア・イノベーターとしても注目を集める高丸慶氏。経営者でありながら、自らも看護師の資格を持ち、現場の最前線に立つ高丸氏に、医療、介護、病気や怪我のリスクとの向き合い方について聞いてみました。
医療の進化で、人を死なせない時代へ。
医療はどんどん進化を続けています。ひと言でいうと、簡単には人を死なせない時代になりました。ビックデータやAIの発達で、どんな病状に対して、どんな治療をすればいいのかが明確になり、その蓄積も日々進んでいます。その一方で、誰もが健康な状態で、寿命を全うできるわけではありません。長生きをすることで、病気や怪我の後遺症と付き合いながら、生きていく時間をどう過ごすのかを考える必要が出てきます。こうした時間を支えていくサービスのひとつが介護です。
尊厳のある生活を支える、オーダーメイドのサービス。
「介護」という言葉の語源は、「介助」と「看護」を足したものと言われています。もともと介護というのは、尊厳のある生活を支えることと定義されています。ここでポイントとなるのは、尊厳というものは、個人によって様々な価値観があるということです。つまり、本来の介護というのは、その人の想いに寄り添い、オーダーメイドのサービスを提供することだと思います。残念ながら、現在の介護保険制度のもとでは、生活を支えることがメインで、尊厳という部分まで手が回っていません。そこで、私たちの会社では従来の介護保険サービスに加えて、自費での尊厳ある生活を支えるサービスを提供しています。
前向きな行動が、生きる原動力になる。
尊厳ある生活を支えるサービスの具体例について、お話ししたいと思います。たとえば、車椅子生活になってしまったけれど、ゴルフがしたい。介護が必要な状況ではあるけれど、大好きだったハワイにもう一度、旅行したい。健康に不安はあるけど、どうしても孫の結婚式には出たい。こうした想いを叶えるために、訪れる施設との事前対応、付き添いの看護師の手配と教育、万一の時を想定した医療体制のバックアップなど万全の準備を整えるのが、わたしたちの仕事です。現場でいつも感じることは、こうした前向きな行動が、その方の生きる力になっているということですね。
リスクのその先に、人生は続いていく。
「団信革命」を開発された理由のひとつに「前向きに生きる力を応援したい」という発想がああるとお伺いしました。まさに、この考え方がこれからの日本社会に必要な発想だと思います。介護は、治療や保険金が支払われたところで終わりではなく、その後に続くものです。介護保険では回数や時間に制限があるので、一日3回注射が必要なケースなど、一回は自費になるため、想定以上に負担になるケースもあるんです。住宅ローンでいえば、保険で残債がゼロになり、住居費の負担がなくなることで、ご自身やご家族の想いを実現する前向きな行動に、お金が使えるようになります。私の友人に10代で病気になり、人工肛門になった人がいますが、今は元気に仕事をしています。医療の進化は、人を死なせない時代に突入しました。病気や怪我でリスクを背負っても、その後の人生はずっと先まで続くのです。だからこそ、年齢に関係なくリスクに備えておくことが大切だと思います。