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監修者プロフィール
甲斐沼 孟 /
国家公務員共済組合連合会 大手前病院
認知症予防には食事の改善が大切
認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因によって認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出る状態です。予防には、脳の健康を保ち老化を防ぐことが重要になります。そのためには、生活習慣の改善とともに、食事内容の見直しを進めることも有効です。
たとえば、アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというたんぱく質が脳に異常に溜まることが原因です。これを予防するには、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸、カテキンなどの抗酸化物質、葉酸などを積極的に取ると良いと言われています。また、塩分の取り過ぎで高血圧を発症すると脳血管性認知症のリスクが高まりますから、減塩メニューを心がけることが大切です。
このように、毎日の食事に気をつけることが認知症予防の大きな鍵となります。
認知症を予防する食事方法
認知症を予防する食事方法についてご紹介します。これらの食習慣は、生活習慣病など他の疾患の予防にも役立ちますので、ぜひ実践していきましょう。
バランスの良い食事内容を心がける
麺や丼など、一品だけの食事は栄養のバランスが崩れがち。主食・主菜・副菜のそろった食卓が理想的です。炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良く取れるような食事内容を心がけましょう。
たとえば、魚や野菜、大豆製品、海藻などを使う和食はおすすめです。同じく、魚や野菜、ナッツ類、オリーブオイル、赤ワインを取る地中海風の食事も、認知症予防に有効と言われています。
適正なカロリーや食事量を摂取する
肥満はアルツハイマー型認知症のリスクを高めるだけでなく、高血圧や糖尿病、耐糖能異常などを誘発します。血圧や血糖値などを適切にコントロールできていないと、脳血管障害が起こりやすくなり、脳血管性認知症のリスクも高まります。
日々の食事の量やカロリー、脂質や糖分の摂取に気を配り、肥満を予防しましょう。ちなみに、75歳以上の摂取カロリー目安は、男性は約1800~2100kcal/日、女性は1400~1650kcal/日とされています。極端なカロリー制限は、脳に必要な栄養が不足する恐れがありますから、要注意です。
塩分の取り過ぎに注意する
脳梗塞は、脳血管性認知症のリスクを高めます。脳梗塞の背景には高血圧である場合が多いため、塩分控えめの食事を心がけたいものです。重度の高血圧を有する場合には、目安として、1日6g未満に抑えるようにしましょう。
認知症を予防する食べ物
認知症を予防する食べ物をご紹介していきます。毎日の食卓に取り入れていきましょう。
青魚
サンマ、アジ、イワシ、サバなどの青魚には、不飽和脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれます。DHAは脳の構成成分であり、特にアルツハイマー型認知症の予防に効果があると言われ、記憶力や判断力の向上にも役立つとされています。EPAは血管を拡張して血行を促進する作用があり、生活習慣病の予防につながります。これによって、間接的に認知症の発症予防に役立つとされます。
缶詰や開き干しなどの加工食品にもDHAやEPAは含まれますから、取り入れやすい形で食べると良いでしょう。
緑黄色野菜・果物
ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、イチゴなどの果物には、ホモシステインという有害なアミノ酸を無害化する働きを持つ葉酸(ビタミンB群の一種)が多く含まれます。血液中のホモシステイン濃度が下がることで、認知症や、脳梗塞などの原因となる動脈硬化の抑制が期待できます。
緑黄色野菜や果物には、ビタミンCやビタミンEも多く含まれます。ビタミンCは免疫力を高め、血中コレステロール値を下げる作用があります。ビタミンEは、老化の原因である過酸化脂質の生成を妨げる働きがあります。ビタミンCとビタミンEを一緒に取ると抗酸化作用が高まり、認知症予防に効果的です。
また、カリウムを多く含む野菜や果物、海藻類は、血液中のナトリウムを排せつする働きがあり、高血圧の予防に有効です。多くの効用を持つ緑黄色野菜や果物を、積極的に取っていきましょう。
コーヒー・緑茶
コーヒーに含まれるポリフェノールの一種、クロロゲン酸や緑茶に含まれるカテキンには抗酸化作用があります。緑茶に含まれるカテキンなどのポリフェノールには、抗酸化作用や抗炎症作用があり、アミロイドβの蓄積を抑制する作用も報告されています。また、緑茶には前述の葉酸も含まれています。
コーヒーも緑茶もカフェインが含まれているため、多量に飲むと睡眠障害などの可能性があります。一日に数杯、適度に楽しむのが良いでしょう。
オリーブオイル
オリーブオイルには、不飽和脂肪酸であるオレイン酸が含まれています。オレイン酸には、血中コレステロールや中性脂肪をコントロールする働きがあり、動脈硬化や脳梗塞のリスク低下が期待できます。また、エキストラバージンオリーブオイルに含まれるオレオカンタールという成分が、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する効果があるという実験結果もあります。
熱に強く、酸化しにくいエキストラバージンオリーブオイルを中心に、様々な調理に利用してみてはいかがでしょうか。
カレー
カレー粉に含まれるウコンには、クルクミンというファイトケミカルが含まれています。クルクミンは免疫細胞を活性化して、認知症の予防に役立つと言われています。また、アミロイドβが脳内に溜まる速度を抑える作用があるとされています。
カレーが好きという方は多いでしょう。同じく認知症予防効果が高いとされる野菜をたっぷり入れて、作ってみてはいかがでしょうか。
大豆製品
大豆に含まれるレシチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンの原料になります。神経伝達物質が作られると脳機能が正常に保たれやすくなり、認知症の予防に効果的と言われています。また、納豆に含まれるナットウキナーゼは、血栓ができるのを防ぐ効果があるため、主に脳梗塞などが原因となる脳血管性認知症の予防につながります。
豆腐、みそ、納豆など日本食には大豆製品が豊富です。ぜひ積極的に取り入れましょう。
赤ワイン
赤ワインにはアントシアニンやレスベラトロールといった抗酸化物質(ポリフェノール)が豊富に含まれています。赤ワインを飲むことで、老化を防ぎ、動脈硬化や高血圧、認知症の発症を抑える効果が期待できます。一日250~500ml程度のワインは、認知症の発症を抑えるという報告もあります。
認知症予防に効果的と言われる地中海風の食事でも、食事と共に赤ワインが飲まれています。適度な量を、バランスの良い食事とともに楽しむことをおすすめします。
認知症のリスクを高める食べ物
認知症のリスクを高めるとされる食べ物もあります。主に以下のものが挙げられます。
肉の脂身
ラードや背脂など、動物性の油(魚を除く)に含まれる飽和脂肪酸は、取り過ぎると血液中の悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化の原因となります。摂取過多により脳梗塞や脳血栓などを引き起こすことがあり、認知症発症のリスクも高めます。できるだけ脂身の少ない肉を選ぶようにしましょう。
マーガリン・ショートニング
マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸も、血液中の悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化の原因になるとされています。ショートニングとは、パンやお菓子に使われる食用油脂です。ファーストフードやパン、お菓子中心の食生活は控えましょう。
ただし、加工技術の進化により、トランス脂肪酸の含有量は以前に比べて大きく減少しています。低トランス脂肪酸のマーガリンも出ています。商品パッケージを確認してから選ぶと良いでしょう。
まとめ
認知症の予防には、食材選びや献立のバランスに気を配ることが大切です。また、料理をすること自体もおすすめです。キッチンに立ち、手先を動かすのは軽い運動になり、脳を活性化します。
食事を通じて、楽しくおいしく、認知症予防をしていきたいものですね。
- 2023/03/01新規作成