ロコモとは?要介護を防ぎ健康寿命を延ばすための基礎知識と予防法
「片足立ちで靴下が履けない」「家の中で滑ったりつまずいたりする」など身体機能の衰えを感じることはありませんか?コロナ禍で家に閉じこもることが常態化し、高齢の方だけでなく、比較的若い方でも体力の衰えを感じる方が増えている今、「ロコモ」という言葉が注目されています。
要介護にならないために、また、健康寿命を伸ばしたいと思っている方に向けて、ロコモの基本的な知識やロコモのチェック方法、予防に役立つ情報を紹介します。
INDEX
移動機能が低下した状態を指す「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」とは?
ロコモとは「ロコモティブシンドローム」の略称で、日本語では「運動器症候群」と呼ばれています。2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、筋肉や骨、関節などの運動器に障害が起こり、立ったり、歩いたりといった移動機能が低下している状態を指します。
運動器は、体を支える骨、骨を曲げたり衝撃を吸収したりする関節や軟骨、椎間板、体を動かす筋肉や神経などで成り立っており、人間の身体を根幹で支えています。運動器に障害が起こると、寝起きの動作や、立ったり座ったりすることに支障が生じたり、歩行が困難になったりします。この状態がロコモであり進行すると要介護になる可能性もあります。
実際、要支援・要介護になった原因のトップに運動器の障害が挙げられています。厚生労働省による「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、介護が必要となった原因のうち「骨折・転倒」が12.5%、「関節疾患」が10.8%、「脊椎損傷」が1.5%で、これらを運動器の障害としてまとめると24.8%となります。これは認知症の17.6%、脳血管疾患(脳卒中)の16.1%を上回る数値です。
ロコモになる原因は?
ロコモになる原因は病気によって運動器に障害が生じるケース、加齢によって運動器の機能が低下するケースなどさまざまです。ここでは、ロコモの主な原因とフレイルとの違いを解説します。
運動器の疾患と加齢による機能低下
ロコモになる主な原因として以下が挙げられています。
〈主な疾患〉
- 骨粗しょう症やそれに伴う骨折
- 軟骨や椎間板に問題が生じる変形性関節症、変形性脊椎症
- 脊柱管狭窄症による神経障害
- 関節リウマチ
〈骨折〉
- 筋力低下によるサルコペニア(筋肉減弱症)
〈加齢による機能低下〉
- 関節や筋の痛みや手足のしびれ
- 筋萎縮などによる関節可動域の制限
- 筋力の低下
- バランス能力の低下
- 柔軟性の低下
身体の機能低下が疾患や怪我がきっかけとなって、進行する場合もあります。体が自由に動かないことから運動の機会が減ってさらに運動器の機能が低下していきます。
また、疾患が特になくても「腰痛や肩こり」「活動量の低下」「事故やケガ」「痛みやだるさ」などの放置によって運動器の障害が進行し、徐々にロコモになる場合もあります。
フレイルとどう違う?
ロコモやサルコペニアとともに、よく耳にする言葉に「フレイル」があります。フレイルとは、加齢とともに心や体、社会性などの機能が低下した状態を指す言葉で、健康な状態と要介護状態の中間に位置付けられています。
フレイルはロコモよりも広い概念で、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルの3つの側面に分けられています。ロコモやサルコペニアは身体的フレイルに該当します。
フレイルについては以下の記事で詳しく紹介しています。
あなたの移動機能を「ロコモ度テスト」で簡単チェック!
交通網の発達した現代では自分の足で歩く機会が減っています。コロナ禍でそれがさらに加速してしまいました。骨折の経験がない方、日常生活に支障はない方も実は要注意です。知らないうちにロコモの状態に陥っているかもしれません。
自分がロコモかどうかをチェックできる方法があります。
日本整形外科学会などが立ち上げた「ロコモ チャレンジ!推進協議会」のサイトではロコモの兆候があるかを簡単にチェックできる「ロコチェック」ほか、3つのテストで判定する「ロコモ度テスト」を紹介しています。
- ロコチェック-ロコモ チャレンジ!推進協議会(ロコモ チャレンジ!推進協議会のサイトが開きます)
「片足立ちで靴下が履けない」「階段を上がるのに手すりが必要」など7つの質問に答えることでロコモの兆候があるか判定できます。
- ロコモ度テスト-ロコモ チャレンジ!推進協議会(ロコモ チャレンジ!推進協議会のサイトが開きます)
下肢の筋力を調べる「立ち上がりテスト」、歩幅を調べる「2ステップテスト」、体の状態や生活状況を調べる「ロコモ25」の3つのテストから成り立っています。
健康寿命を延ばすためにロコモを予防するトレーニングを始めよう
ロコモの予防に役立つ運動や食生活の注意点を紹介します。また、現在ロコモの兆候がある、すでにロコモになってしまった方も、適切に対処すれば低下した移動機能を向上させられます。あきらめずに、体を動かす習慣を身に付けましょう。
「片足立ち」と「スクワット」でバランス感覚と筋力アップ!
転倒防止などに役立つ2つの運動を紹介します。体の状態に合わせて、無理のない範囲で続けてみましょう。
片足立ち
目を開けたまま、片足で1分間立ちます。左右で1回ずつを1セット、1日に3セット行います。バランス感覚を養い、転倒防止につながります。行う際は、机や手すりなどつかまるものがある場所で行ってください。
スクワット
下半身の筋力アップにつながります。足を肩幅に広げて立ち、ゆっくり膝を曲げます。5~6回を1セット、1日に3セット行います。スクワットができない方はイスと机を使用して立ったり座ったりを繰り返して行います。
軽い運動を生活に取り入れよう!
ロコモ予防のためには、運動と身構えずに生活の中で自然に体を動かすことを意識するのも大切です。
- テレビを見ながらストレッチをする
- 買い物や通勤の際に歩幅を広くして早く歩く
- 家事の合間にストレッチをする
- 外出の際は階段を使う
- 拭き掃除や草むしりなど家事をしながら体を動かす
- 姿勢のよい座り方や立ち方を意識して筋力を維持する
埼玉県では、忙しくて運動教室に参加できない人や健康づくりに関心が低い人でも楽しみながら参加できるよう、「埼玉県コバトン健康マイレージ」を実施しています。スマートフォンや歩数計を持って歩くだけでポイントが貯まり、抽選で賞品が当たります。
そのほか、県内の市町村が家で手軽にできる体操動画を紹介しています。身近なところからチャレンジしてみてはいかがですか。
【参考情報】
- 埼玉県コバトン健康マイレージ-埼玉県(埼玉県ホームページへのリンクです)
- お家でできる運動動画-埼玉県(埼玉県ホームページへのリンクです)
骨や筋肉を強くするために食生活にも気を付けよう!
骨や筋肉を強くするためにはカルシウムだけでなく、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKをとることも大切です。また、筋肉が痩せないように炭水化物や脂質もしっかり摂取しましょう。
高齢になるとタンパク質不足になりがちなので意識してタンパク質をとるようにして、足りないときはプロテインなどの栄養補助食品も利用する方法もあります。
また、ロコモを予防するためにはいろいろな食品を食べて栄養状態を良好に保つ必要もあります。メニューを考えるときは10の食品群(魚、肉、乳製品、油、緑黄色野菜、海藻、いも類、卵、大豆製品、果物)の中から7つ以上を選んで組み合わせると栄養バランスが良くなります。
埼玉県では健康長寿につながる食事の工夫を紹介しています。1週間の食事を振り返るチェックシートやレシピの紹介もあるので利用してみましょう。
【参考情報】
- 「食べる」からフレイル予防-埼玉県(埼玉県ホームページへのリンクです)
まとめ
要介護にならないために、また、健康寿命を延ばすためには、ロコモの基本的な知識を得て、早めに対策をすることが大切です。ここで紹介したロコモのチェック方法や、トレーニング方法を生活に取り入れ、高齢になってからも、末永く自立した健康な暮らしを実現しましょう。
- 2023/08/10新規作成