腸活とは?善玉菌を増やす食材や生活習慣の改善で健康生活を始めよう
腸内環境を整える活動=腸活が注目を集めています。腸内環境の良しあしは、便通だけでなく免疫機能やメンタル、肌の調子なども左右するといわれています。心身共に良いバランスを取るために、腸活を始めたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、腸内環境に関する基礎知識、腸活のメリットや具体的なやり方を解説します。
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監修者プロフィール
中路 幸之助/医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター
そもそも腸内環境とは?
まずは、腸内環境についての基礎知識をおさらいしておきましょう。
大腸にはたくさんの腸内細菌が生息している
人間の腸管(主に大腸)にはさまざまな腸内細菌が生息しています。主に大腸には約1000種類、数にすると100兆個の腸内細菌がいるといいますから、膨大な数であることが分かりますね。これらの腸内細菌の集まりを腸内細菌叢(そう)といいますが、顕微鏡で見ると花畑のように見えることから腸内フローラとも呼びます。
腸内細菌の種類は人それぞれで極めて多様、さらに食事や住む国などによっても異なります。腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分類でき、理想的なバランスは善玉菌2割、日和見菌7割、悪玉菌1割とされています。ただし、研究が進むにつれ、一概に分類することが難しいことが分かってきています。
健康な時は善玉菌が活発に働き、日和見菌は悪玉菌の増殖を防ぎます。しかし、日和見菌は身体が弱った時には、悪玉菌と同じように悪い働きをしてしまうことが分かっています。
腸内フローラのバランスを保つことが大切
善玉菌、悪玉菌、日和見菌はそれぞれが密接な関係を持ち、複雑にバランスを取りながら腸内環境を整えています。心身の健康のためには、腸内フローラのバランスを保つことが大切になります。
悪玉菌はたんぱく質や脂質中心の食事、不規則な生活やストレス、便秘などで増えるとされます。肥満や糖尿病、大腸がん、動脈硬化症などの疾患を持つ人の腸内環境は、健康な人のものとは大きく異なることが分かっています。また、認知症やうつ、不眠なども腸内細菌と関わりがあるという研究結果があります。
一方で、健康な人の腸内細菌は善玉菌が優勢です。善玉菌は乳酸や酢酸などを作り、腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑えます。食べ物を分解し、ビタミンB1・B2・B6・B12・K、葉酸などの栄養素を作る働きもあります。また、腸の運動を活発にして病原菌などによる感染を予防し、発がん性を持つ腐敗産物ができにくい腸内環境を作ります。さらに、善玉菌の体を構成する物質には、体の免疫機能を高め、血清コレステロールを低下させる効果もあると報告されています。
腸活に期待できるメリットとは
腸内環境を整える活動=腸活によって期待できるメリットはさまざまです。以下にご紹介していきましょう。
- 便通の改善
- 善玉菌が産生する短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)は、大腸の粘液の分泌を促します。大腸は、この粘液のバリアによってスムーズな排せつを促しています。バリア機能が低下すると、下痢や軟便、便秘などが起こります。腸活で粘液の産生を促す善玉菌を増やすことで、便通の改善が期待できます。
- 免疫力の向上
- 腸には免疫細胞の約7割が集まるといわれています。腸活で腸内環境を整えると、腸の免疫細胞が正常に働きます。免疫力が向上することで、細菌やウイルスによる病気のリスクを下げることができます。
- 睡眠の質の改善
- 睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンは、トリプトファンという物質により生み出されます。このトリプトファンは、体内に取り込んだタンパク質を腸内細菌が分解・合成することで作られます。腸内環境が整うとトリプトファンが順調に生成されて、質の良い睡眠につながります。
- 肌トラブルの改善
- 腸内環境が乱れると悪玉菌が増加して、アンモニアなどの有害物質を作ります。有害物質は体内に吸収され、血液によって肌まで到達します。その時、汗に含まれる有害物質が肌を刺激して、肌荒れを起こすと考えられています。また、肌のターンオーバーに悪い影響を及ぼす可能性もあります。腸活を行うと、腸内環境が原因の肌荒れの改善が期待できます。
- 肥満の予防
- 腸活で腸内環境が良くなると、エネルギー代謝をコントロールする短鎖脂肪酸が正常に作られるようになり、肥満の予防が期待できます。
- 老化の予防
- 腸活で腸内環境を整えると免疫細胞の働きが良くなり、老化の一因である細胞や組織の炎症を抑えられるため、老化予防が期待できます。
【腸活のやり方1】
善玉菌を増やす食材を取る
腸活の具体的なやり方をご紹介していきましょう。まずは、善玉菌を増やすための食材について解説します。
腸内環境に良い作用をもたらす微生物を「プロバイオティクス」と呼びますが、これを直接取り入れるという方法があります。具体的には、ビフィズス菌や乳酸菌などを含むヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物を食べることです。プロバイオティクスの多くは胃酸で死んでしまい、腸内に定着することもないため、定期的に取って腸に補充する必要があります。ビフィズス菌や乳酸菌などが含まれる整腸剤やサプリメントを活用するのも良いでしょう。
もう一つが、腸内の善玉菌の餌となり、数を増やす作用のある「プレバイオティクス」を取る方法です。具体的には、オリゴ糖や食物繊維を含む野菜・果物・豆類・キノコ類などを食べることです。オリゴ糖は大豆・玉ネギ・ゴボウ・ネギ・にんにく・アスパラガス・バナナなどに多く含まれるため、これらの食材を積極的に取ると良いでしょう。また、市販のオリゴ糖を取る方法もありますが、摂取量が多過ぎると下痢やおなかの張りが起きることもあるので注意してください。
【腸活のやり方2】
生活習慣を改善する
運動や睡眠などの生活習慣を見直すことも、腸活につながります。具体的な方法を以下にご紹介していきましょう。
- 適度な運動
- 適度な運動は腸活に有効です。腸に刺激を与え、自律神経の働きを良くして便秘の改善につながります。ウォーキングやジョギング、階段の上り下りなど無理のない運動を日常生活に取り入れましょう。
- マッサージ
- 手のひらでおなかを優しく、時計回りに押していくマッサージは、腸の動きを活発にします。ただし、妊娠中や産後の方、持病のある方は避けます。痛みが出たり、症状が改善されなかったりする場合は医師に相談してください。
- 十分な睡眠
- 腸内細菌にとって睡眠不足は大敵です。短時間睡眠が続くと、腸内細菌の構成のバランスが崩れるという報告があります。また、腸内の病原菌を排除する力が低下するという研究結果もあります。日頃から快眠を心がけましょう。
- ストレスの解消
- ストレスや不安は自律神経の乱れを引き起こし、腸の動きに影響を与え、下痢や便秘を引き起こすことがあります。腸に炎症や潰瘍がないのに下痢や便秘が続く「過敏性腸症候群」という病気もあるほどです。スポーツや音楽など自分なりのストレス解消法をいくつか見つけておき、実践しましょう。
- 規則正しい生活
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食事の時間が日々バラバラだったり、平日と休日の睡眠時間の差が大きかったりなど、不規則な生活は腸内細菌のバランスを崩す原因となります。できるだけ、規則正しい生活を心がけましょう。
適切な腸活を行えば、2週間程度で腸内細菌のバランスが変わるといわれています。腸活の効果は、便のコンディションでチェックしてみましょう。便は臭いがあまりなく、色は黄色から黄褐色、いきまずにスッキリ出る適度な硬さがベストです。
まとめ
腸は食べ物を消化・吸収・排せつするだけではなく、免疫力の向上や老化の予防などにも重要な役割を果たす器官です。健康の要ともいうべき腸を整える「腸活」の大切さを、今一度考えたいものですね。
腸活は継続が力となります。ちょっと良くなったから、またはすぐに効果が出ないからとやめることはおすすめできません。日々の生活に無理なく習慣づけて、腸内環境を改善していきましょう。
- 2024/08/07新規作成