

INDEX
- 「FIRE」とは定年を待たずにリタイアして貯蓄を資産運用しながら生活すること
- FIREではなく「サイドFIRE」という選択もある
- サイドFIREのメリットとデメリット
- 具体的な数字でサイドFIREの暮らしをイメージしてみよう
- まとめ

監修者プロフィール
鳥谷 威 /
CFP®認定者/1級ファイナンシャルプランニング技能士
「FIRE」とは定年を待たずにリタイアして貯蓄を資産運用しながら生活すること
まずは、FIREという言葉の概念と、具体的なライフスタイルについてご紹介します。
1. FIRE=「経済的自立」と「早期退職」を意味する言葉
FIREとは経済的自立(Financial Independence)と早期退職(Retire Early)という二つの言葉の頭文字から作られた言葉です。アメリカ発祥の考え方で、若いうちにリタイア後の生活費を補えるような貯蓄をして、資産運用による収益を得ながら経済的自立を目指すことを指します。
資産運用を前提としていない従来の早期退職の場合、リタイア後は貯金を取り崩しながらの暮らしになります。そのため、老後資金が枯渇しないように多額の貯えが必要でした。ビジネスで大成功するか、多額の遺産を相続するなどのケースでない限り、実現は難しかったといえるでしょう。
一方、FIREの場合、マイホームや車、ブランド品などにお金をあまり使わないライフスタイルであれば、億単位の資金がなくても実現可能です。FIREでは、お金持ちになることよりも、自分らしい人生を楽しむことに重点を置いているのが特徴です。
2. FIREに向いていないタイプはある?
労働から解放されて好きなことに時間を使えるFIREに憧れ、目指したいと考える人は少なくないはずです。しかし、FIREは万人にとって夢のライフスタイルとは言い切れないでしょう。
たとえば、会社以外に社会とのつながりがない人や、仕事に生きがいを感じている人にとっては、張り合いのない生活に耐えられず、また仕事に戻りたくなるかもしれません。しかし、職歴に空白ができると再就職が難しくなる場合もあり、要注意です。
倹約や節約が苦手だったり、資産の取り崩しが不安だったりする場合も、FIREに不向きと言えるでしょう。資産運用は計画通りにいくとは限らず、時には手元の資産でマイナスをカバーすることも起こりうるからです。また、自分や家族の病気、親の介護などを想定した備えも必要です。リタイア後も金融や経済に関するアンテナを張り、マネーリテラシーを高めていける人でないと、想定外のピンチに対応できません。
FIREではなく「サイドFIRE」という選択もある
さて、ここからは完全にリタイアする以外の方法、「サイドFIRE」についてご紹介します。
通常のFIREでは、資産運用による収益をベースに暮らすことを目指しますが、サイドFIREは資産運用をしつつ、副業などの勤労収入と合わせて生活します。身の丈以上の暮らしをせず、無駄な支出を減らす努力も必要です。目先の贅沢より、将来の楽しみのために節約できるかどうかが鍵になります。
サイドFIREで副業をするにあたって大切なのは、得意分野や好きなことを生かして、自分のペースで働けること。自分らしく働きながら経済的自立を目指すのがサイドFIREだといえます。通常のFIREでは自由時間を持て余し、社会とのつながりが希薄になることもありますが、サイドFIREなら仕事を通じて生きがいを感じたり、新しい人間関係を広げていったりできるでしょう。
サイドFIREのメリットとデメリット
次に、サイドFIREのメリットとデメリットを解説します。
1. サイドFIREのメリットとは
サイドFIREのメリットは、FIREよりも少ない資金で実現可能だということです。運用益だけでなく労働収入も得られるので、手元資金が目減りしても埋め合わせができます。労働収入という柱があることは、経済面だけでなく精神面でも支えになるでしょう。また、資産運用というもう一つの柱がある分、自分の好きなことを仕事にしやすいといえます。運用益と労働収入の両輪で走るイメージです。
厚生年金をもらえるような働き方をすれば、年金受取額が大きく減らないのもよい点です。本格的に仕事に戻りたいと思ったときに、キャリアに空白が生じないので再就職しやすいのもメリットだといえるでしょう。
2. サイドFIREのデメリットとは
一方で、サイドFIREにはデメリットもあります。投資はリスクを伴うため、相場の変動により資金が大きく減る可能性を考えておかなくてはなりません。株の暴落などがあった場合、計画通りの生活ができなくなることもあるでしょう。手元にある資金全てを投資に回さず、元本が保証される預金での貯蓄と併せて検討したいところです。
また、親の介護や子どもの進学にかかる費用負担が増えた場合、想定以上に労働する必要が出てくるかもしれません。万一自分が働けなくなったときは、資産を取り崩しながら生活することになります。
インフレについても考慮しておくことが大切です。現在の生活費が月に30万円の場合、インフレ率(物価上昇率)が年2%で推移すると1年後に必要な生活費は30万6000円、10年後には約36万5000円にもなります。
具体的な数字でサイドFIREの暮らしをイメージしてみよう
FIREに必要な金額は、年間の生活費×25倍で計算します。これは、資産を年4%で運用しつつ生活費も4%以内に収めれば資産が減らないという、アメリカ発祥の「4%ルール」をベースとした計算方法です。この4%は、アメリカの過去の市場成長率(年7%)からインフレ率(3%)を引いた数字が根拠になっています。
たとえば、年間360万円の生活費が必要な場合、FIREするためには9000万円の手元資金が必要となります(360万円×25=9000万円)。9000万円を年4%で運用すれば、運用益は360万円になりますから、元本を取り崩さずに運用を続けていけることになります(9000万円×0.04=360万円)。ただし、9000万円の資金をためるのは容易ではないでしょう。
一方でサイドFIREの場合、年間生活費の半分、180万円を労働収入で得られれば、必要な手元資金は4500万円となります((360万円-180万円)×25=4500万円)。これは、毎年4%の利回りで運用できたと仮定すると、毎月約12.3万円を約20年間積立投資することで達成できる金額です。
横スクロールできます。
FIRE | サイドFIRE |
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経済的に自立して仕事を完全に辞め、 資産運用による収益だけで生活するスタイル |
資産運用による収益を得ると共に、 仕事でも収入を得て生活するスタイル |
◆CASE 生活費が年間360万円必要な場合 FIREに必要な手元資金は9000万円 (参考) 毎月約24.6万円を運用利回り4%で約20年間積立投資できた場合、手元資金9000万円を達成可能※ |
◆CASE 生活費が年間360万円必要な場合 ・資産運用による収益 年間180万円 ・労働による勤労収入 年間180万円 で暮らすようにすると、FIREに必要な手元資金は4500万円 (参考) 毎月約12.3万円を運用利回り4%で約20年間積立投資できた場合、手元資金4500万円を達成可能※ |
▼ 仕事を完全に辞める場合、 多額の手元資金を貯めなくてはならない |
▼ 勤労収入があるので、その分 FIREのための手元資金は少なくて済む |
※利回りが年率4%の場合
「家族との時間をもっと大切にしたい」「趣味の世界を究めたい」など、FIREを目指す理由は人それぞれでしょう。完全にFIREするのではなく、サイドFIREを目標にすることで実現可能性が高まります。
ただし、「4%ルール」は日本にそのまま当てはまるわけではありません。4%の運用利回りを目指すためにはそれなりのリスクを取る必要があります。また、今後一定の利回りが確保される保証はなく、3%や2%、マイナスとなった場合を想定しておくことも大切です。また、株式等の譲渡益と配当金には税金がかかることも忘れないようにしましょう。
まとめ
副業収入という柱がある分、完全なFIREより実現可能性は高く、リスクも減らせるのがサイドFIRE。経済的な自由と時間的な自由を、バランスよく手に入れる一つの方法といえます。単に自由時間を増やすというより、生きがいを持って過ごせる時間を増やす。そんな視点でサイドFIREを考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2023年2月8日現在の情報に基づいて作成しておりますが、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。
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