児童手当と児童扶養手当の違いは? シングルマザーが受け取れる手当について解説


一人で子育てする場合、特に子どもが小さいうちは働き方が制限されてしまいます。シングルマザーなどのひとり親は経済的に厳しいと感じている方が多く、養育費を受け取れている方も少数派です。
そこでもれなく利用したいのが、公的な手当です。国や自治体が援助するさまざまな手当を把握して、確実に経済的援助を得られるようにしましょう。この記事では、シングルマザーが受け取れる手当について詳しく解説します。


INDEX
シングルマザーの平均年間就労収入は236万円
日本のひとり親家庭の相対的貧困率について調べた調査では、2021年は44.5%という結果がでています(※1)。相対的貧困率とは、世帯の年間可処分所得(手取り収入)を世帯人員で調整したものの中央値を算出し、その半分に満たない人の割合を指します。日本のひとり親家庭の相対的貧困率は先進国のなかでも最悪のレベルだといわれています。
厚生労働省は2021年に全国のひとり親世帯などの生活実態を把握するため調査を実施しています。同調査によると、母子世帯数は119.5万世帯、父子世帯は14.9万世帯と母子世帯が圧倒的に多いことがわかりました。また、平均年間就労収入は父子世帯が496万円なのに対し、母子世帯は236万円でした(※2)。各種手当を加えても母子世帯の家計が厳しくなるのは否めません。養育費の受給状況も「現在も受けている」という回答が3割未満でした(※3)。
父子世帯も母子世帯も就業している人の割合は高いものの、母子世帯はパート・アルバイトなど非正規雇用で働く人の割合が約40%(※4)と高くなっています。親族の助けが得られない場合は子育て、家事、仕事を母親が一人で担うことになり、短時間労働にならざるを得ない状況があるのかもしれません。非正規雇用の場合、責任のある仕事を任せてもらえないなどさまざまな要因で収入が低くなってしまうことが考えられます。
そこでシングルマザーの助けになるのが各種手当の存在です。次項からシングルマザーが受け取れる手当について解説します。
※1)2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況-Ⅱ 各種世帯の所得等の状況 6 貧困率の状況より(外部サイトへのリンク)
※2・3・4)令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果-母子世帯と父子世帯の状況、離婚によるひとり親世帯の養育費の状況、ひとり親世帯の就業状況(厚生労働省)より(外部サイトへのリンク)
シングルマザーが利用できる手当を知り、活用しよう
国や自治体には、シングルマザーなどのひとり親を支援するさまざまな手当があります。
児童手当
シングルマザーに限らず、すべての子育て世帯が対象の制度です。
支給月額(一人当たり):3歳未満は一律1万5000円、3歳以上小学校修了前は1万円 (第3子以降は1万5000円)、中学生は一律1万円
2024年6月現在、所得制限に該当する場合に支給額は減額され、所得上限限度額を超えると支給されません。ただし、2024年10月分から支給対象が高校生年代まで拡充され、所得制限は撤廃されます。また、第3子以降の支給額は月額3万円に増額されます。
児童手当をもらうためには子どもの出生時、他の市町村からの転入時に現住所の市区町村で手続きが必要です。公務員の場合は勤務先への届け出、申請も必要です。
児童扶養手当
父または母が死亡、離婚、生死不明などによる母子・父子家庭や、父または母が重度障害のある家庭で、18歳に達した年度末までの児童(障害児の場合は20歳未満)を養育している人に支給されます(所得制限あり)。
支給額は所得に応じて判断され、全額支給、一部支給、支給なしのいずれかになります。支給月額は次のとおりで、物価スライド制のため年度により異なります。以下は2023年度の支給額です。
第1子…全部支給/4万4140円、一部支給/4万4130円~1万410円
第2子(加算額)…全部支給/1万420円、一部支給/1万410円~5210円
第3子以降(加算額)…全部支給/6250円、一部支給/6240円~3130円
なお、2024年11月分より、第3子以降の加算額が第2子と同額になり、所得制限限度額も引き上げられます。児童扶養手当をもらうためには現住所の市区町村での申請手続きが必要です。
児童育成手当(東京都)
各自治体には、ひとり親家庭への手当を独自に設けているところがあります。
たとえば、東京都には児童育成手当という制度があり、都内の各区市町村が条例を制定して実施しています。
父または母が死亡、離婚、生死不明などによる母子・父子家庭や、父または母が重度障害のある家庭で、18歳に達した日以後の年度末までの児童を養育する人に支給されます(所得制限あり)。支給月額は、子ども1人につき1万3500円で、児童育成手当をもらうためには現住所の区市町村での手続きが必要です。
就学援助制度
学校教育法第19条には、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と定められています。
この制度は、小中学生の子どもがおり生活保護を受けている、あるいはそれに準じる世帯が対象で、学用品費や学校給食費、修学旅行費などの支援が受けられます。
支援内容や申請時期は各自治体により異なります。
ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭の親子の医療費を自治体が助成する制度です。
子どものみの医療費助成制度は、ひとり親に限らず「乳幼児・子ども等医療費助成制度」がありますが、「ひとり親家庭等医療費助成制度」では、子どものみではなくひとり親の医療費に対しても助成があります。
条件や助成内容、所得制限限度額は自治体により異なります。
たとえば、さいたま市には「ひとり親家庭等医療費支給制度」があり、健康保険各法の規定による一部負担金(保険診療分)の全額が支給されます。支給を受けるためには各区役所への申請が必要です。
ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金
20歳未満の子どもを扶養するひとり親家庭の保護者が、就職につながる対象講座を受けて修了すると受講料の60%(上限あり)が給付されます。
対象者は母子家庭の母または父子家庭の父であって、受講の時点で子ども(20歳未満)を扶養していること。その他給付条件があります。
対象となる講座は、簿記検定試験、介護職員初任者研修など雇用保険制度の指定講座のほか、都道府県の長が地域の実情に応じて対象とする講座などがあります。希望する講座に申し込む場合は、事前相談が必要なので、各市町村の担当窓口にお問い合わせください。
ひとり親高等職業訓練
促進給付金
20歳未満の子どもを扶養するひとり親家庭の親の就業に向けた資格の取得のため、修業訓練中の生活の負担軽減を図り、資格取得を容易にするために給付されます。
支給額は、市町村民税非課税世帯は月額10万円、課税世帯は月額7万500円。支給期間は修業期間の全期間(上限4年)とされています。
対象となるのは、児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準にあることなどいくつか支給条件があります。対象となる資格は看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士、シスコシステムズ認定資格、LPI認定資格など就職の際に有利となる資格で、かつ、養成機関において6カ月以上のカリキュラムの修業が予定されているもの。申し込む前に事前相談が必要なので、各市町村の担当窓口にお問い合わせください。
離婚前後親支援事業
離婚協議開始前にある親を対象に支援講座や家庭裁判所への調停申し立ての支援、養育費などの履行確保などに関連して弁護士による相談支援などを行っています。さらに、養育費の受け取りに係る弁護士への成功報酬の支援(受取開始後1年間)もあります。
このほかにも、各自治体独自の家賃補助や保育料減免など、さまざまな支援策が用意されています。お住いの自治体窓口やホームページで調べてみましょう。
シングルマザー・シングルファザーの暮らし応援サイト「あなたの支え」(こども家庭庁)には、自分の住む地域でどのような支援が受けられるか、検索できるサービスもあります。
シングルマザー・シングルファザーの暮らし応援サイト「あなたの支え」(こども家庭庁へのリンク)(外部サイトへのリンク)
まとめ
シングルマザーが受け取れる主な手当などについて解説しました。安定した生活を送りながら子どもの健やかな成長を見守るために、使える支援は最大限活用したいものですね。公的な支援は、年度ごとに内容や条件が変わることもあります。こども家庭庁のサイトや各自治体のサイト、窓口備付けの冊子に詳しい情報が載っていますので、まずは目を通してみることをおすすめします。
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