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監修者プロフィール
伊谷 俊宜 /
介護 経営コンサルタント
在宅介護とは住み慣れた自宅で介護を行うこと
在宅介護とは、老人ホームなどの施設介護によらず自宅で介護することを指します。住み慣れた家や、慣れ親しんだ土地で過ごせる在宅介護は、本人の精神面やQOL(人生の質)から見て好ましいといえるでしょう。
しかし、共に暮らしながら介護をする家族にとっては、負担が大きくなりがちです。息の長い介護を続けるためには、人の手を借りてがんばり過ぎないことも大切です。
在宅介護のメリットとデメリット
在宅介護の具体的なメリット、デメリットについて解説します。
在宅介護のメリット
在宅介護のメリットは、介護を受ける人が住み慣れた自宅で暮らせることです。家族と一緒に生活でき、長く親しんだ地域社会で過ごせることは、精神面の安定にもつながるでしょう。
施設に入居するより、介護費用を大きく抑えられるのも大きなメリットといえます。また、さまざまな介護サービスの中から必要なものだけを選択・利用できるため、自由度が高いのもポイントです。
在宅介護のデメリット
在宅介護のデメリットは、同居する家族に負担がかかりがちだという点です。休日もなく終わりも見えず、心身共にストレスがたまって疲労困憊し、介護うつに陥るケースも珍しくありません。特に認知症の介護は、暴言や妄想、徘徊などに悩まされることが多いようです。
介護離職で経済的に困窮するリスクや、老々介護での共倒れの恐れもあります。急な体調の変化など、不測の事態に適切に対処できない可能性もあるでしょう。
在宅介護で受けられる
サービス
在宅で受けられる介護サービスは数多くあり、訪問型・通所型・宿泊型などに分類できるほか、福祉器具のレンタルなども含まれます。詳しく解説していきましょう。
1. 訪問型サービス
自宅で受けられるサービスで、以下のようなものがあります。
- 訪問介護…ホームヘルパーや介護福祉士が、身体介護(入浴や食事、排せつなど)、生活援助(掃除や洗濯、調理など)、通院のための乗降介助を行う
- 訪問入浴介護…浴槽を積んだ入浴車で自宅を訪問し、入浴の介助を行う
- 訪問看護…医師の指示の下で、看護師が健康チェックや療養上の世話などを行う
- 居宅療養管理指導…医師や薬剤師などが、療養上の管理や指導などを行う
- 訪問リハビリテーション…理学療法士などがリハビリテーションを行う
また、サービス事業所と同じ市区町村に住む住民のみが利用できる「地域密着型サービス」として以下があります。いずれも、緊急の事態には通報すればすぐ駆けつけてもらえるサービスが付いています。
- 夜間対応型訪問介護…18時から翌朝8時までの夜間帯にホームヘルパーや看護師などが定期巡回。排せつの介助や安否確認などを行う
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護…看護と介護が連携して、時間帯を問わず一日に複数回定期訪問。ホームヘルパーや看護師などが、食事や排せつなどの生活介助や必要な療養上の世話を行う
2. 通所型サービス
自宅から施設に通って受けられるサービスで、以下のようなものがあります。
- デイサービス(通所介護)…日帰りで施設に通い、食事や入浴など日常生活上の支援や機能訓練を受けたり、レクリエーションなどを行ったりする
- デイケア(通所リハビリ)…日帰りで施設や病院に通い、理学療法士や作業療法士からリハビリテーションを受けたり、日常生活上の支援を受けたりする
また、「地域密着型サービス」として以下があります。
- 地域密着型通所介護…定員18人以下の小規模デイサービスで、きめ細かいサービスが特長。食事や入浴などの支援や、機能訓練、レクリエーションの時間が充実
- 認知症対応型通所介護…認知症の方を対象にしたデイサービス(認知症対応型デイサービス)。認知症の特性に配慮したケアや介護を受けられる
- 療養通所介護(療養型デイサービス)…常に看護師による観察を必要とする難病、認知症、脳血管疾患後遺症等の重度要介護者又はがん末期患者を対象にしたサービス。食事などの生活介護だけでなく、機能訓練などの医療的なサービスも受けられる
3. 宿泊型サービス
一時的に施設に寝泊まりして受けるサービスで、以下のようなものがあります。
- ショートステイ(短期入所生活介護)…施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援やリハビリテーションを受ける
- 医療型ショートステイ(短期入所療養介護)…介護老人保健施設や病院などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援のほか、医師や看護師による医療や、理学療法士などによる機能訓練が受けられる
4. 訪問・通所・宿泊の融合型サービス
「地域密着型サービス」として、以下のようなものがあります。
- 小規模多機能型居宅介護・・・訪問介護や短期間のショートステイのサービスが受けられる。利用者の希望に応じて、通所を中心にして、訪問、宿泊の3つのサービスを組み合わせることができる
- 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)…医療的ニーズの高い人が対象。小規模多機能型居宅介護に訪問看護を組み合わせて提供されるサービス
5. 福祉用具のレンタル・購入、住宅改修費の補助
介護保険適用の安い価格で、介護ベッドや入浴補助具などの福祉用具のレンタル・購入が可能です。自己負担額を大きく抑えることができます。
また、手すりの設置など介護リフォームにかかる住宅改修費の7~9割を、保険で支給するサービスもあります。対象となるリフォーム費用の上限額は20万円です。
6. 介護保険を使わない
自費サービス
これまでに紹介したサービスは、全て介護保険によるサービスです。介護保険ではカバーできない部分を補うものとして、市区町村やNPO法人、民間企業などが提供する介護保険外の自費サービスもありますので、以下にご紹介します。
- 介護予防・日常生活支援総合事業…掃除、食事の準備などの家事支援、外出支援、生活機能維持のための運動やレクリエーションなどを受けられる
- 介護保険外サービス…おむつの支給や訪問理容院、配食サービス、介護者のための家事支援など、介護保険が適用されないサービスを受けられる
在宅介護サービスを利用するまでの流れ
実際に介護サービスを利用する際の流れについて知っておきましょう。
- 1.要介護認定を受けるために、親の居住地の市区町村にある高齢者福祉窓口か、地域包括支援センターに申請を行います。
- 2.市区町村の職員や委託を受けたケアマネジャーなどが自宅を訪問し、本人の心身の状態や日常生活の様子などについて聞き取り調査を行います。
- 3.市区町村の依頼により、かかりつけ医が主治医意見書を作成します。
- 4.聞き取り調査の結果とかかりつけ医の意見書を基に、一次判定を行います。次に、保健・医療・福祉の専門家が二次判定を行います。
- 5.「要支援1・2」「要介護1~5」「非該当(自立)」のいずれかの判定が出されます。結果は通常、申請日から30日以内に送付されます。
- 6.介護サービスの利用計画書(ケアプラン)を作成します。通常はケアマネジャーが利用者本人や家族と相談しながら、プランを作成します。
- 7.ケアプランに基づいたサービスを利用開始します
なお、要支援1または2の判定が出た場合は「介護予防サービス」となり、ケアマネジャーは原則として地域包括支援センターの職員が担うことになります。サービス内容も、要介護者が利用するものとは少し異なります。
介護サービスの利用の流れについては、こちらの記事も参考にしてください。
介護保険とは? 制度のしくみや利用できるサービスなどを分かりやすく解説
まとめ
在宅介護にはメリットもありますが、介護をする人の負担が高くなりがちなのが注意すべき点です。無理なく続ける上で大切なのは、上手に人の手を借りて介護を分散すること。また、同じ立場にある人たちと情報交換したり、在宅介護の経験が長い人に相談したりするのもおすすめです。
在宅で受けられる介護サービスの内容は多岐にわたるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら決めていきましょう。