「実家が空き家に……」放置しておくリスクと、その対策法を知ろう
近年、「空き家問題」のニュースを見聞きしている方は多いのではないでしょうか。日本では空き家が増え続け、特に管理が不十分な状態の空き家は20年間で約1.9倍に増加し、社会問題となっています。
空き家を放置すると、ごみの不法投棄や不法侵入、放火、倒壊などさまざまなトラブルが起こる可能性があります。実家が空き家になっている、自宅や相続予定の実家が空き家になりそうだという方に向けて、空き家を持ち続けるデメリットやその対策法を紹介します。
INDEX
法改正により、空き家を放置すると多くのデメリットが生じることに
空き家とは、一般的に「誰も住んでいない家」のことを指します。平成27年(2015年)5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空き家を「概ね年間を通して居住やその他利用がされていない建築物(住宅に限らない)」と定義しています。
総務省が実施している「住宅・土地統計調査」では、空き家を以下の4種類に分類しています。
- 1.売却用の住宅:新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
- 2.賃貸用の住宅:新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
- 3.二次的住宅:別荘などの普段は人が住んでいない住宅
- 4.その他の住宅:1~3以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など
この中で問題となっているのは、「その他の住宅」に分類される空き家です。「その他の住宅」は管理が不十分な状態になりがちで、放置すると景観の悪化や老朽化による倒壊などの恐れがあります。「その他の住宅」は平成10年(1998年)から平成30年(2018年)の20年間で182万戸から347万戸と約1.9倍に増加しており、今後も急速に増えると予想されています。
こうした背景から、令和5年(2023年)12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部が改正・施行されました。管理不十分な空き家に対して、より踏み込んだ対応策やその後の活用体制を強化し、周囲に悪影響を及ぼすことを未然に防ぐための施策が盛り込まれています。
一例を挙げましょう。法改正前は、倒壊の恐れなど危険性の高い空き家について、固定資産税の減額措置を解除する罰則がありました(「住宅用地の特例措置」の対象から除外)。しかし、法改正後は窓ガラスが割れている、雑草が繁茂しているなどの空き家についても、状況が改善されない場合は同様の罰則が適用されることになります。
このように、空き家を放置すると所有者の金銭的なデメリットも増えることになります。空き家になる前の対策が重要だと言えるでしょう。
空き家の半数以上は「相続」によって発生している
空き家は、主に相続や引っ越しによって発生します。国土交通省による「令和元年空き家所有者実態調査」によれば、空き家の取得経緯として一番多かったのが「相続」で54.6%でした。
空き家になってから時間がたつほど管理や活用が難しくなり、資産価値が低下して売却も難しくなる傾向があります。また、空き家を放置することで周辺の環境に悪影響を及ぼしたり、不審者が出入りしたりしてトラブルに発展するケースもあります。
空き家にしないためには、「家族と、自宅の将来の方向性について話しておくこと」が重要です。所有者の意思を明確にしておくことで、後々のトラブルを回避できます。所有者が元気なうちに、家族間で次のようなことを話し合い、共有しておきましょう。
- 今後、自宅を住み替える予定はあるか
- 自宅を相続する人は誰か
- 相続した後はどうする予定か(売却、居住、賃貸に出すなど)
- 相続が発生した場合に困ることはないか など
例えば、住み替え後に売却を希望しているなら、その意向を子供などの家族に相談・共有しておくことが大切です。もし、売却できなくても、売却方針などを遺言で残しておきましょう。本人の意思が分からないと、引き継いだ人は売りにくくなってしまいます。また、一旦現状維持にする場合でも、先々の方向性を家族に伝えておかないと、将来、遺された家族が困ることになります。その結果、空き家になるリスクも高まります。
いずれの場合も弁護士や司法書士、不動産仲介会社、工務店、金融機関などの専門家に早めに相談して、できることから着手しておくことが大切です。
家族と相続について相談しなかった・相談した体験談
空き家にしないためには「家族と、相続や自宅の将来の方向性について話しておくこと」が重要という説明をさせていただきました。実際に、家族と相談せずに苦労した話と相談してよかった例をご紹介します。
- 家族と相談しておかなかったため、相続人が苦労したAさん
Aさんは、単身で自分名義の戸建てに住んでいた。3年前に奥様が亡くなり、子供達(長男・長女・次女)はそれぞれ所帯を持ち、市外の遠方に在住。Aさんは「自分の亡き後は、子供達が何とかしてくれるだろう」と自宅や財産に関する相談をしていなかった。しばらくして、Aさんは亡くなり、長男主導で相続手続きを開始。自宅について、長男は売却して資金化、長女と次女は賃貸に住んでいるため自宅の相続を希望し、兄弟間で揉めてしまった。結局、家庭裁判所が間に入ることになり、相続手続が長期化。その間建物は空き家となり、管理の手間が増え、資産価値も減少してしまった。
- 家族と相談しておいてスムーズに相続できたBさん
Bさんは、介護施設に入居することになり、家族(長男・長女・次男)と相談し自宅を売却することにした。家族の勧めで入居が決まってすぐに自宅の査定・売却活動を行ったことで、早々に買主が決まり、売却資金を施設入居費に充当することができた。また、Bさんの手助けは市内に住む長男家族がすることになったため、財産の分配が不平等にならないよう、遺言書を作成していた。Bさんが亡くなった後、兄弟は揉めることなくスムーズに遺産を受け取ることができた。
売却?賃貸?空き家の具体的な対策とは
空き家を所有している場合、まずは「売却」「賃貸」「活用」「解体」などの方針を決めることが大切。自治体のサービスを利用したり、不動産業者に相談したりする方法があります。
自治体の多くは、空き家に関する相談窓口を設けています。空き家を所有している、あるいは相続する予定があり、悩んでいる場合は相談してみるのも良いでしょう。空き家に関するセミナーを開催している自治体もあるので、どのような方法があるか知るためにも、参加してみることをおすすめします。
また、空き家の売却や賃貸を考えているなら、不動産業者に相談するほかに、「空き家バンク」に登録する方法もあります。空き家バンクは、全国の多くの自治体に設置されています。売りたい、貸したい空き家を登録しておくと、買いたい、借りたい人が検索し、申し込んでくれる仕組みです。
また、現在家を所有しており家族に相続する予定の方は、自宅や財産の分配方法や意思を遺言書の形にしておくことを検討しましょう。遺言書がない場合、配偶者や子供など相続人全員の話し合いで不動産や財産の分け方を決めることになります(遺産分割協議)。
自治体と企業が連携し、埼玉県内の空き家問題を解決
「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によると、埼玉県内の空き家は34.6万戸。平成25年の調査と比べて減少しているものの、利用目的のない空き家(「その他の住宅」)に限って見ると12.4万戸で増加傾向にあります。
埼玉県では空き家の所有者や活用希望者などを対象にした、空き家相談の総合窓口を開設しています。専門知識や経験が豊富な「空き家コーディネーター」が、課題解決のための提案や専門家の紹介、空き家に関連する費用の試算、所有者と活用希望者とのマッチングなどを行っています(相談は原則無料)。
また、県内の市や町と民間企業が連携し、対策に取り組むケースもあります。埼玉りそな銀行の子会社である、地域デザインラボさいたま(愛称:ラボたま)は、自治体や企業・団体などと連携してさまざまな空き家対策に取り組んでいます。詳しくは下記のリンクをご覧ください。
まとめ
実家が遠方にあり管理が難しいなど、さまざまな事情で空き家となったままの家は少なくありません。しかし、放置していると家はどんどん傷んでいき、思わぬトラブルが生じる恐れもあります。将来、相続する家がある方にとっても、先延ばしにはできない問題だと言えるでしょう。
まずは、今後どのようにしていきたいか、ご家族と話してみてはいかがでしょうか。そして、住まいの将来に関するご相談(相続・資産の有効活用など)がありましたら、ぜひお近くの埼玉りそな銀行へお越しください。