「埼玉県の未来を担う若者(ヤングケアラー)を応援したい」
―さくらそうプロジェクトの取り組み
埼玉りそな銀行での新しい取り組みを提案する「さくらそうプロジェクト」において、ヤングケアラーについて関心をもち、「埼玉県の未来を担う若者(ヤングケアラー)を応援したい」をテーマに私たちにできることはないか、検討を開始しました。
ヤングケアラーが社会問題となっている背景には、少子高齢化や核家族化、共働き世帯の増加等があり、今後ますます社会全体でヤングケアラーの支援体制を築いていく必要があると考えています。検討を進める中で、ヒヤリングを行った方々からこのような意見が出ました。
「ヤングケアラー」という言葉は聞いていて、何か役に立ちたいけれど、何をしたらいいかわからない…。
「ヤングケアラー」の人たちが何に困っているのかわからない…。
応援に至る前に、まず「知る」機会を広めることが、とても大切だと私たちは考えています。
そこで、「咲いたま、みっけ!」をご覧の皆さまに、私たちが学んだことを「知って」いただきたく、記事を掲載します。是非ご覧ください。
第7期さくらそうプロジェクトメンバー
富樫 里和 柴田 千賀 萩原 由美子 村上 麻由 西貝 怜子 八田 有加
INDEX
ヤングケアラーとは(埼玉県のケアラーへの取組み)
はじめに、「ヤングケアラー」とはどのような人たちのことを指すのか、また埼玉県ではどのような取り組みをしているのか、ご紹介します。
ヤングケアラーとは
ケアラーとは、高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を提供する者であり、そのうち18歳未満の方をヤングケアラーといいます。
※より詳しく知りたい方は埼玉県「ヤングケアラー支援サポートブック」もご参照ください。咲いたま、みっけ!にも相談窓口について記載したコラムがあります。
埼玉県の取組み
現在、埼玉県の高校生の約25人に1人がヤングケアラーといわれています。また、全国でもトップクラスのスピードで高齢化が進んでいる埼玉県は、ケアラー支援に積極的に取り組んでおり、2020年3月に全国で初めて「埼玉県ケアラー支援条例」を制定しました。
条例の基本理念である「全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができる」ように、県だけでなく「県民、市町村、事業者、関係機関、民間支援団体等の多様な主体が相互に連携を図りながら、ケアラーが孤立することのないよう社会全体で支えていくこととしています。
埼玉県が取り組むケアラー、ヤングケアラー支援に関する情報をまとめたサイトをご紹介します。
ケアラー(介護者等)支援 - 埼玉県(外部サイトへのリンク)
なぜ埼玉りそな銀行はヤングケアラー支援に取り組んでいるの?
私たちがヤングケアラーに関心を持ったきっかけは、2022年11月に従業員向けに実施されたヤングケアラーセミナーでした。そもそもなぜ、埼玉りそな銀行は取り組みを開始したのでしょうか?
ヤングケアラー支援に取り組む「サステナビリティ推進室」に話を聞いてみました。
子どもの居場所への取組み強化―
きっかけは騎西支店の店頭ディスプレイ
Q. 埼玉りそな銀行で取り組みを始めたきっかけは何でしょうか?
A. ヤングケアラーについてお話しする前に、「子どもの居場所」への取り組みを強化したきっかけからお話しします。
当社グループでは、SDGsなどのサステナビリティ(持続可能性)の文脈で、優先的に取り組むべき環境・社会課題として「地域経済の活性化」や「少子高齢化に起因する将来不安の解消」等を挙げています。
そのような中で、2020年8月に、埼玉県と埼玉県社会福祉協議会と「子ども食堂等子供の居場所を支援するための協働に関する協定書」を締結し、埼玉りそなSDGs遺言信託・埼玉りそなSDGsマイトラストを取扱開始※したのが大きな転機でした。
※ご参考(当時のプレスリリース):「埼玉りそなSDGs遺言信託」「埼玉りそなSDGsマイトラスト」の取扱開始について
当社では、各支店それぞれの取り組みの中で、店頭のディスプレイを制作し来店するお客さまに様々なものをアピールする取り組みがあります。その中で騎西支店(加須市)の従業員が子ども食堂に関連する金融商品のディスプレイを設置した際、ご覧になったお客さまからお声をいただきました。お客さまは加須市内で子ども食堂の運営にかかわっている方だったのです。
騎西支店の従業員は、お客さまとのコミュニケーションの中で、支店近隣の地域で子どもたちを支援する活動が実際に行われていることを知り、自分たちも何か地域の役に立ちたいと考えるようになったといいます。そこで、金融機関として金融商品をご案内することに加え、一市民としてフードドライブに参加することにしました。
この活動を知った当社の他の支店でも、地域で子どもの居場所支援を行っている方との輪を広げ、金融商品を通じた子どもの居場所支援や、フードドライブ活動等、銀行の枠組みを超えて子どもの居場所支援の活動が広がっています。中でもフードドライブについては2023年の夏時点で約2万点の寄贈に至っています。
フードドライブで集まった食品
ヤングケアラーに対する取り組みへの発展
Q.「子どもの居場所」への取り組みから、どのような経緯でヤングケアラーに関する取り組みに発展したのですか?
A. フードドライブ等の活動をきっかけに、埼玉県や埼玉県社会福祉協議会をはじめ、地域で子供の居場所づくりにかかわる方々と意見交換をさせていただく機会を多く持つようになりました。
その中で、「ヤングケアラー」の存在について、地域の大人たちに知ってもらうことが大切だという話をよく耳にするようになりました。
埼玉県では、2021年度より11月をケアラー月間とし、ケアラーのことを知ってもらうための施策を強化する期間を設定しています。当社でも埼玉県と連動し、2022年11月はケアラー強化月間として、各支店の店頭にてヤングケアラーを知ってもらうためのディスプレイ設置等、複数施策を展開しました。
そのような中で、まずは地域の大人として当社の従業員一人ひとりが「ヤングケアラー」について知り・理解を深めることが必要と考え、ヤングケアラー勉強会を開催しました。平日の閉店後、県内の3人の関係者によるヤングケアラーの実情に関する講演会をオンラインで実施し、社内での理解浸透を図りました。
具体的な取り組み
Q. 埼玉りそな銀行はどのような取り組みをしていますか?
A. 当社で実際に実施している子どもの居場所支援の取り組み・ヤングケアラーに対する取り組みには、以下のようなものがあります。
子どもの居場所支援の取り組み
- フードドライブ…県内の多くの支店等にて地域の子ども支援団体と接点を持ち、必要なものを集めてお渡しする活動が広がっています。地域によっては定期的に協力している支店や、地域のお客さまと協力して一緒に実施している支店もあります。
- りそな YOUTH BASE…子どもたちの居場所づくりを目的に、2022年10月に開設。せんげん台支店において、学校や家庭に居場所のない子ども・学ぶ意欲のある子どもへの学習支援や、児童向け屋内イベント等を実施する子ども支援団体に、一部スペースを無償で貸し出しています。地域の子ども支援団体や地域のお客さま等と連携したイベントも実施しています。
ヤングケアラーに対する取り組み
- 店頭ディスプレイ(南越谷支店・北越谷支店・幸手支店)…来店されたお客さまにヤングケアラーについて知っていただくきっかけ作りとして、店頭に手作りのディスプレイを設置しました。
店頭ディスプレイ
- ヤングケアラー勉強会…当社の従業員向けに実施し、社内での理解浸透を図りました。ある支店では、定期的に振り込みをしに来店する子どもの存在に気付いたロビー係が、その子どもに対して地域の相談窓口のパンフレットを渡す、といったことにもつながっています。
地域密着で営業している私たちに、地域の大人としてできることは沢山あると思います。今後も良い取り組みを社内外にご紹介し、取り組みの輪を広げていきたいと考えています。
ヤングケアラーに関わる方々へのインタビュー
プロジェクトの中で、元ヤングケアラーの方やヤングケアラーの支援に関わる方々にお会いしました。
最後に、お話を伺った方々の声を一部ご紹介します。
元ヤングケアラーの方
- 高校生でケアをしていた時は、どこに相談したらいいか、どんな制度があるのか何も分からなかった。
- ケアラー時代には学習できる場所に行ける時間がなかった。家でできる学習支援が欲しかった。
- ケアがひと段落したところで、学びなおして正社員として働きたいと考えていた。ケアが終わった後の喪失感等、心理的なケアのためにも、何か新しいことに挑戦するための相談場所があると良い。
子ども支援団体の方(りそな YOUTH BASEを利用)
- 継続的な活動が行える場所が足りない・手狭。りそな YOUTH BASEが使えてとてもありがたい。
- 物資の寄付などは増えているが、それを保管しておく場所や、ものを運ぶ手段が足りず困ることがある。
- 自分に自信のない子どもたちが多いように感じる。自信をもって社会に踏み出すための一歩を支援したい。
- 潜在的ヤングケアラーは多くいる。情報を発信することで本人や周りに気付いてほしい。
- 相談できる大人、本音が言える人と出会える場所が必要。どこにいけば良いか情報発信ができればと考え、活動している。
せんげん台支店に併設する「りそな YOUTH BASE」
セミナー参加者(りそな YOUTH BASEで、地域の方向けにヤングケアラーについてのセミナーが実施されました)
- 企業として支援したい思いはあるが、何をすれば良いのか分からない。
銀行でお取引いただいている個人のお客さま
- 未来ある子どもたちのために寄付をしてみたい。
学校関係者
- ヤングケアラーの子どもたちにもしっかりと学んでほしい。
行政関係者
- ヤングケアラーの問題を企業や地域の人に知ってもらい、支援の輪を広げたい。
まとめ
ヒヤリングを通じて、私たちは大きく以下の二つに気が付きました。
- 地域の人たちがヤングケアラーの存在を知り、頑張っている彼らに寄り添っていく必要がある
- ヤングケアラーだった方に対し、社会で働くためのサポートが必要なケースがある
色々なケースがありますので、全てのヤングケアラーの役に立つことではないかもしれませんが、例えば、居場所を創り、相談できる場所を増やしていくことができたら助けになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。当社では、ヤングケアラーに限らず様々な地域の「子どもの居場所」を作るため、「りそな YOUTH BASE」を2022年10月に開設しています。地域の支援団体と連携しりそな YOUTH BASEの活動を活性化していくことも、できることの一つだと考えています。
また、銀行員はお客さまへのご提案のために、FPや宅建など、資格の勉強を沢山します。就職に向けて、資格の本などを寄付する取り組みも検討できるのではないかと考えています。
ヤングケアラーの支援には、地域の様々な方が協力して、できることを一つ一つ積み上げていくことが必要です。
まずはヤングケアラーの存在を知り、様々な背景の方がともに活躍できる社会を作るため、一緒にできることを探していきませんか?