何ともユーモラス?
秩父夜祭「諏訪渡り」に秘められたほろ苦いお話


秩父の冬の夜を彩る「秩父夜祭」といえば、京都の祇園祭や飛騨の高山祭とともに「日本三大曳山祭」に数えられる有名なお祭りです。地元では冬まつり、夜祭、妙見さまとも呼ばれるこのお祭りには、切なくほろ苦い、とある逸話が残されています。今回は、神様を少し身近に感じられるようなお話とともに、迫力満点の秩父夜祭をご紹介します。


INDEX
秩父夜祭とは
冬の空に輝く花火に、軽快なお囃子。太鼓の音に合わせて響く「ホーリャーイホーリャーイ」という掛け声とともに、笠鉾(かさぼこ)と屋台が曵き回されます。屋台では歌舞伎や曵き踊りが上演され、見る人を幻想的で華麗な世界へと引き込みます。
総鎮守である秩父神社の例大祭は神社の創建時から行われ、現在のように笠鉾と屋台が登場する迫力満点の祭りとなったのは商業でにぎわい始めた江戸時代中期頃とされています。今では国の重要有形・無形民俗文化財に指定され、ユネスコの無形文化遺産にもなりました。毎年、12月2日と3日の2日間に渡って行われます。祭りの最後には急な団子坂で、大きな山車を曵き上げようとする人々の熱気と迫力に圧倒されます。
諏訪渡りに秘められた逸話
そして秩父の冬に欠かせないこのお祭りには、とある伝説が残されています。秩父神社に祭られているのは、「妙見菩薩」(みょうけんぼさつ)という女の神様です。この妙見菩薩は祭りの日に、男神である武甲山の龍神と逢い引きをするのだ、といわれています。ところが男神の龍神には正妻がおり、それが町内にある諏訪神社の「八坂刀売命」(やさかとめのみこと)だというのです。
お互いに思い合う妙見菩薩と龍神ですが、正妻である八坂刀売命の目もあり、いつでも会えるというわけではありません。そこで年に一度、この夜祭の日だけは正妻の許しを得て逢い引きをする、と言い伝えられています。
また、祭りの初日に行われる「馬場町諏訪渡り」は、この年に一度の逢瀬の許可を得るための祭礼。御神幸(ごしんこう)の際には、正妻の八坂刀売命を怒らせないよう、屋台囃子の演奏を止めて諏訪神社の前を通るというのも、興味深い習わしです。
夏の七夕伝説のように、年に一度だけ、冬に逢瀬を許される妙見菩薩と龍神は、秩父神社から少し離れた「亀の子石」のある場所で落ち合うとされています。秩父を守る秩父神社の神様と、その御神体山である武甲山の龍神にとっても、秩父夜祭はとても大切なお祭りなのです。
秩父神社にまつわるパワースポットを回ってみよう
秩父夜祭は秩父神社の例大祭であり、その秩父神社は「知知夫国」全体を守る総鎮守です。神社内とその周辺にはいくつかのパワースポットがありますので、散策しつつ回ってみましょう。
亀の子石
妙見菩薩と龍神が落ち合うとされる亀の子石。この亀は実は玄武であり、顔は人、体は亀という姿です。亀の子石は秩父神社から1キロほど離れた場所にあり、祭りの時には神社から白い大幣(おおぬさ)が運ばれ、泰安されます。
龍神木
秩父神社境内にある龍神木は、推定樹齢千年の大木です。赤い鳥居と大木を見ているだけで、とても厳かな気分になります。この大木の周囲をぐるりと回ってみると、裏側の根本にハート型をした洞があり、これを見つけると恋愛が成就するとも言われているそうです。秩父神社を訪れた際は、龍のすみ家とされる龍神木も参拝しましょう。
龍神池
龍神池にこんこんと湧き出る水は、武甲山の伏流水です。武甲山の水は龍神そのものとされており、龍神池も龍のすみ家となっています。
神社の社殿彫刻
秩父神社の社殿は、周囲に豪華な彫刻が施されています。社殿正面の左側には「子宝・子育ての虎」と、よく見て、よく聞いて、よく話す「お元気三猿」、社殿の裏側には「北辰の梟」(ほくしんのふくろう)、社殿右側には「つなぎの龍」と、四面それぞれに異なる彫刻を見ることができます。ぐるりと回ってその姿を確認してみてください。
神様の切ない伝説が残された秩父夜祭を楽しもう
秩父の冬を華やかにする神事には、神様の恋愛事情が隠されていました。その伝説を知ると、冬の夜空を彩る花火もよりロマンチックに感じられそうです。祭りには、春に田植えのために山から呼んだ龍神を、秋の収穫を終えて山に送り返すという意味もあり、秩父では武甲山と龍神が古くより人々の生活に深く関わっていることが分かります。
学業成就や家内安全、子孫繁栄といったご利益があるとされる秩父神社と、その例大祭である秩父夜祭は、秩父の人たちにとって欠かせない存在です。ぜひ一度、ユネスコの無形文化遺産にもなった秩父夜祭へ足を運んでみませんか?
- 2023/12/26新規作成


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