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築80年の木造工場跡地をシェアアトリエにリノベーション

地方の面白さに魅せられて、地元飯能でアトリエをオープン
─まちづくりに興味を持ったきっかけは?
30歳ぐらいまでは飯能に対して「つまんない所だなぁ」と思っていました。結婚情報雑誌「ゼクシィ」の編集をしていた時は長野版や静岡版の担当だったので、東京から山手線感覚で新幹線に乗り現地へ取材に行っていました(笑)そこで現地の営業と各地を回るうちに、地方の面白さに気づいたことがまちづくりに関わるきっかけになりました。
飯能で事業を始めたのは、自分のやりたいことを自由にできる環境があってリスクが少なかったからです。祖父が創業した工場(赤井製作所)を継ぎ、そこをリノベーションして、シェアアトリエ「AKAI Factory」を作りました。今でも製作所の仕事をしながら、個人事業としてライターや撮影などを行っています。
実は…飯能はアーティストの多い場所だった
─そもそもアーティストってそんなにいるのでしょうか?
「AKAI Factory」は自分自身アートが好きで、アーティストのアトリエとして使ってもらえたらいいなという思いだけで始めました。だから特にアーティストがいるかどうか調べていませんでした(笑)。でも、始めてみたらスタートからドカッと埋まって…聞くと、飯能には大御所から駆け出しまで、アーティストがたくさん住んでいることが分かりました!どうやら都内に出やすい立地で、生活コストが抑えられる環境というのが理由にあるようです。アーティストが多いということは、飯能にとっていい情報なので「飯能はアーティストのまち」として印象付けたいと思っています。
その後、地域の特徴を掘り起こしたということが評価されて、2020年に開催された埼玉県の「まちなかリノベ」というコンペティションで最優秀賞を受賞しました。

─アトリエで活動するアーティストについて教えてください。
現在は革小物、シルバーアクセサリー、和紙の職人など10組のアーティストがここで制作、販売をしています。私自身はイベント開催や発信を通じてアーティストをサポートする存在でいたいと思っています。「AKAI Factory」は飯能駅から歩いて5分程度ですが、そんなに人通りが多くない立地なので、ここを目的に来る人以外のお客様は少ないです。展示イベントなどがあるとにぎわうのですが、人が多いと多いで話し声が気になって制作に集中できないこともあるみたいです。そういうときの対処法をアーティストの方が教えてくれたんですが、それが面白いんですよ(笑)その対処法は「話している人と仲良くなること」です。知らない人の話し声はガヤガヤして聞こえるけど、仲良くなれば気にならなくなるので自ら話しかけにいくそうです。建設的な考え方ですよね。

これからも飯能に面白い場所を創っていきたい
商店街にある様々な空き店舗をリノベーション
─「AKAI Factory」以外の活動について教えてください。
主に行っているのは商店街の空き店舗活用ですね。1つはちょうどリノベーション中です。金物屋さんなんですけど、まちの古材を利活用する場所にしようと思っています。今は生産していないものなどの価値を掘り出すような場所にしたいと思っています。
あとは「Bookmark」というコミュニティスペースです。今は色々な機能を集約しているのですが、店舗が増えたら整理していく予定です。「飯能に関わりたい」という人が楽しみながら関われる入り口を作りたいと思い、地元のメンバー5人とスタートしたのが6年前です。でも、数年運用したところでコロナになり、ワンフロアだとWeb会議がやりにくいという問題が起こって…そんな時、長屋の古民家が空いたので無人のコワーキングスペースとして「Nakacho7」を始めました。

─活動する中で苦労したことはありますか?
活動の中で苦労することも色々あります。「AKAI Factory」はギャラリーやショップに人がなかなか集まらないことも多いので、PRの方法は常に模索しています。コワーキングスペースの「Nakacho7」は、当時70万円程度しかリノベーション費用がなくて、ほとんど自分達だけで作ったので大変でした。会社としてはオフィスの契約を持続させるのが難しいです。きちんと大家さんに賃料を払わないといけないので、安定的に利益を出さなければいけないプレッシャーがあります。
1番大変なのは物件探しですね。不動産屋さんの物件だと家賃が決まっているので、リノベーション費用に関するお金の交渉も難しいです。また、大家さんはきれいにして貸さなきゃいけないと思ってますが、活用したい人達は古くても自由にできる物件を探している人が多いので、そこの認識が合わないことはありますね。そういった意味では、古い物件をジャンジャン流通してくれる、変な不動産屋さんがいないとダメなんだと思います(笑)

飯能は誰でも「ブルーオーシャン」になれるまち
─飯能市のいいところはどんなところですか?
たくさんありますが、1番はブルーオーシャンになれるところですね。大きな組織は少なくても、小さな組織で面白い取組みをしている人達が飯能にはたくさんいます。何もないから何でも作れるし、それがいいところと思っています。あとは、都内に比べるとコストを抑えて生活できるところもいいところです。地元の人達は皆さん温かくて、パンをくれたり、野菜くれたり…食べ物には困りませんね(笑)。
アーティストにとって飯能は場所のコストをかけずに活動できて、都内にも割と出やすい「ちょうどいい場所」なんだと思います。
─逆に、もっと良くなると思うところはありますか?
飯能にあと1~2社まちづくり会社があるといいですね(笑)。
自分達が思いつかない面白い企画をやってくれるような民間プレイヤーがもっと増えたらいいなと思います。

行政と民間企業の架け橋のような存在を目指して
─今後の目標について教えてください。
今後の目標は、民間と行政がうまく連携していける体制を作っていくことです。ありがたいことに、ほかの町からまちづくりの仕事をいただくことが増えたので、会社の知名度が上がってきたと思います。それが飯能からも仕事が入ってくるようになると、地元にお金が還元できていい仕組みができると思っています。「AKAI Factory」にはギャラリースペースがあるので、今後も展示やイベントを行ってアーティストの活動を広く発信していきたいです。コロナ渦で美術学校に通う学生の展示機会が減ってしまったことを聞いて、ギャラリースペースの貸出を行ったこともありました。学生にとって、初めての展示が「AKAI Factory」という学生も多かったので、思い出に残ってくれたらいいですね。そして、いつかアーティストとして飯能に戻ってきてもらえたらとても嬉しいです。
あとは、商店街の空き店舗活用を進めていきたいです。市外から来た人はもちろん、市内の人も楽しく過ごせるような場所を考えていきたいです。時代に合わせた商店街の使い方を模索しながら、飯能に面白い場所を作っていきたいですね。

執筆者プロフィール
(株)地域デザインラボさいたま 八木奈央
2017年埼玉りそな銀行小川支店入行。運用商品等の営業を経験した後、地域課題解決事業を行う「地域デザインラボさいたま(愛称:ラボたま)」に出向。現在は移住促進・空き家課題解決のため、様々な「まちびと」の活動を発信している。
詳しくは→「埼玉まちびと 四角いマガジン」
編集後記
色々な人に取材をさせていただいていますが、まちづくりに関わる方は皆さん赤井さんをご存知で、逆に知らない人探しをしたくなります(笑)取材当日は「AKAI Factory」で活動されているアーティストのアトリエを見せていただいた後、赤井さんがリノベーションに携わっている商店街のいくつかを案内していただきました。「ここは○○が美味しい」「ここはこんな歴史がある」など教えていただき、商店街を歩くツアーなんて面白そう!と思いました。そして後日、空き店舗のリノベーションに参加させていただきました。3時間近く壁をペンキで塗り続け、腕が筋肉痛になりました(笑)が、貴重な体験になりました!

飯能市ってどんなところ?
- 場所:埼玉県南西部(人口:約8万人)
- アクセス:西武池袋線・池袋駅まで特急で約42分
- 観光スポット:ムーミンバレーパーク、発酵食品のテーマパーク「OH!!!」など話題のスポットから、飯能河原など自然に触れられる場所も多数あります!(飯能河原は2022年から環境保全活動として有料化の実証実験を行っています)
飯能市の赤井さんおすすめグルメ
- ワインショップ「FUKASHIN」
- コメント:店主・加藤さんのおすすめワインはどれもはずれがありません!美味しいワインが1,000円台から買えるのも嬉しいポイントです。バーも併設されています。
- 店舗情報:埼玉県飯能市八幡町5-12(飯能駅から徒歩7分)Google MAP
- 定休日:火曜日 営業時間:10:00~21:00


- 2023/04/05新規作成


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